職場復帰支援プランとは
厚生労働省の令和6年調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で1か月以上連続休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は12.8%にのぼります。
企業にとって、メンタルヘルス不調を理由とする離職は人材損失につながり、組織全体の生産性にも影響します。
こうした離職を防ぎ、メンタルヘルス不調の従業員が円滑に職場復帰できるよう支援する仕組みが職場復帰支援プランです。
休業から復職までの流れをあらかじめ体系化し、社内で共有しておくことで、従業員の不安を軽減し、離職を可能な限り防ぐことができます。
この章では、職場復帰支援プランの実施手順と、具体的な作成方法についてわかりやすく解説します。
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参考:
厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50b.html
職場復帰支援プランの実施メリット
職場復帰支援プログラムを導入することで、企業には次のような利点があります。
休業から復職までを一連の流れとしてスムーズに支援できる
休業中の従業員に「安心して戻れる場所がある」と感じてもらえる
従業員自身が復帰までのステップを把握しやすくなる
再度の休職や離職を防ぎやすくなる
メンタルヘルス不調から休業した従業員が無理なく職場に戻るためには、企業側の適切なサポート体制が必須です。
また、健康経営の観点からも、従業員の心身の健康を守りながら生産性を高め、企業の業績を維持・向上させる上で、職場復帰支援プランは非常に重要な施策といえます。
従業員が安定して復職できる環境を整えることは、企業にとっても人材の確保や従業員の活躍促進につながる大切な取り組みです。
参考:
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
厚生労働省が示す「職場復帰支援の5ステップ」
厚生労働省が公開している『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』では、職場復帰までの流れを5つのステップにまとめています。
病気休業開始および休業中のケア
主治医による職場復帰可能の判断
職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
最終的な職場復帰の決定
職場復帰後のフォローアップ
以下では、これら5つのステップについて、企業が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。
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【ステップ1】病気休業開始および休業中のケア
休業は、労働者から管理監督者へ主治医が発行した診断書(病気休業診断書)が提出されることから始まります。
管理監督者は、診断書を受け取ったら速やかに人事・労務部門へ共有し、正式に休業手続きを進めます。
休業を開始する労働者には、必要な事務手続きに加えて、職場復帰支援の流れや利用できる制度について丁寧に説明することが重要です。
休業中に安心して治療に専念できるよう、次のような情報提供や支援を行いましょう。
傷病手当金などの経済的な支援制度の案内
不安や悩みを相談できる窓口(産業医・EAP・社内相談窓口など)の紹介
公的・民間の職場復帰支援サービスの情報提供
休業の最長期間(休職制度の期間・保障内容)についての説明
こうしたサポートにより、労働者が安心して療養に集中でき、職場復帰までの道のりをスムーズにすることができます。
【ステップ2】主治医による職場復帰可能の判断
休業中の労働者から「職場に戻りたい」と職場復帰の意思が事業者に伝えられた場合、まず事業者は労働者に対し、主治医による「職場復帰可能」と記載された診断書の提出を求めます。
この診断書には、就業上の配慮事項(勤務時間の調整・仕事内容・仕事の負担をどれくらい軽くするか)について、主治医の具体的な意見を書いてもらうことが望まれます。
ただし、主治医の判断は、主に日常生活レベルでどの程度回復しているかを基準としていることが多く、必ずしも「職場で求められる業務遂行能力が十分に回復している」ことを意味するわけではありません。
そのため、
主治医の意見
実際の業務内容・求められる能力
これらの情報を、産業医など職場側の医療専門職が確認・精査したうえで、復帰に向けた対応を判断することが重要です。
また、事前に主治医へ労働者の職務内容や求められる業務遂行能力について情報提供しておくと、より職場実態に沿った復帰可否の判断が得られやすくなります。
【ステップ3】職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
安全で円滑な職場復帰を実現するためには、復帰を最終決定する前に、必要な情報を丁寧に収集・評価し、復帰の可否を慎重に判断することが欠かせません。
この段階では、
労働者の健康状態
主治医の意見
産業医などの専門的な評価
職場で求められる業務内容・負荷
といった情報を総合的に踏まえ、「今の状態で職場復帰が可能かどうか」を判断します。
そのうえで、実際に復職する際の流れや配慮事項をまとめた職場復帰支援プランを作成します。
プランの作成は、
産業医・保健スタッフ
管理監督者
休職中の労働者本人
が密に連携しながら進めることが重要です。
このプロセスを丁寧に行うことで、労働者が無理なく復帰できる体制が整い、再び休職してしまうリスクを減らすことにもつながります。
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【ステップ4】最終的な職場復帰の決定
第3ステップでの評価結果を踏まえ、事業者は最終的に職場復帰の可否を判断します。
このプロセスは、次の4つの手順で進められます。
労働者の健康状態の最終評価
復職時点における労働者の状態を総合的に確認します。
主な確認項目は以下のとおりです。
再発・再燃のリスク
業務遂行能力(集中力・判断力・持続力など)
就業継続の安定性
症状の安定度や治療経過
生活リズムの安定
勤務負荷への耐性
これらを踏まえ、無理なく働ける状態かどうかを最終的に評価します。
「職場復帰に関する意見書」の作成
産業医は、医学的な視点から次の内容を整理した「就業上の配慮に関する意見書」を作成します。
復職可能と判断される勤務形態(勤務時間・勤務日数・シフト等)
業務内容の調整の必要性(業務負荷の軽減、段階的な業務拡大 など)
再発リスクや注意すべき症状
必要なフォロー体制
必要な人事上の環境整備(休憩時間、配置転換の可否 など)
この意見書は、企業が復職を判断するための基礎資料となります。
事業者による最終的な復職可否の決定
事業者は、産業医の意見書を踏まえ、就業上の安全性と、業務遂行上の妥当性を総合的に検討し、最終的な復職可否を決定します。
決定後は、勤務形態・業務内容・フォロー体制などの就業上の配慮事項を正式に労働者へ通知します。
その他(主治医への情報共有の確保)
事業者は、産業医が示した就業上の配慮事項が、労働者を通じて主治医にも正確に共有されるよう調整します。
主治医と企業側が同じ情報を持つことで、治療計画と就業計画が矛盾なく進み、再発の予防やスムーズな復帰に繋がります。
【ステップ5】職場復帰後のフォローアップ
職場復帰後は、管理監督者による日常的な観察・支援に加えて、産業医や保健師など事業場内の産業保健スタッフが継続的にフォローアップを行います。
復帰後の働き方や体調に変化がないかを丁寧に確認し、必要に応じて職場復帰支援プランを見直し、内容を適切に調整することが重要です。
職場復帰後のフォローアップでは、次の項目を中心に確認・評価を行います。
疾患の再燃・再発、新たな問題の有無の確認
疾患の再発・再燃に早く気づき、迅速に対応することが不可欠です。
疲労の蓄積やストレスの増大など、症状悪化のサインにも注意します。
勤務状況および業務遂行能力の評価
労働者本人の意見だけでなく、管理監督者からの観察・評価も合わせて客観的に判断します。
勤務態度・集中力・作業の持続性なども確認します。
職場復帰支援プランの実施状況の確認
策定した職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認し、必要があれば調整します。
治療状況の確認
通院の状況、病状の変化、今後の見通しなどについて、主治医の意見を労働者から聞き取ることが重要です。
職場復帰支援プランの評価と見直し
職場での様子、関係者からの意見、業務上の課題、ストレス状況などを総合的に踏まえ、職場復帰支援プランの内容を必要に応じて見直します。
職場環境の評価と改善
労働者のストレスや負担を軽減できるよう、業務内容・方法、労働時間、人事労務管理、職場環境などの改善を検討します。
管理監督者・同僚等の配慮
管理監督者や同僚が復職者へ過度な負担をかけないよう、適切な配慮とサポート体制を整えます。
労働者が無理なく勤務を継続できるよう、企業側は継続的なフォローアップ体制を整備し、支援を途切れさせないことが求められます。
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参考:
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
「職場復帰支援プラン」作成に使えるフォーマット
職場復帰支援プランを作るときは、あらかじめ整えられたフォーマットを使うのが便利です。必要な情報をもれなく整理でき、ゼロから作る手間もありません。短時間で仕上げられるため、担当者の作業負担も大きく減らせます。
参考:
労働者健康安全機構「職場復帰支援にかかるモデルプログラム」
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1156/Default.aspx
職場復帰支援プラン作成における注意点
職場復帰支援プログラムは、従業員が安心して職場に戻るための大切な仕組みです。しかし、効果を高めるには、いくつか気をつけたい点があります。担当者・管理者が押さえておきたいポイントをまとめました。
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個人情報は「慎重すぎるくらい慎重に」扱う
復職支援では、健康状態や治療内容など、非常にデリケートな情報を扱います。
第三者への共有は、必ず本人の同意を得る
主治医から意見をもらう場合も、本人の同意が必須
これらを徹底しないと、従業員との信頼関係が崩れ、支援そのものが機能しなくなるリスクがあります。また、「個人情報は厳重に取り扱う」という方針を、会社側から明確に伝えておくことも従業員の安心につながります。
主治医・産業医とこまめに連携する
復帰支援の流れは大まかに決まっていますが、実際には従業員ごとに必要な対応が異なります。そのため、主治医や産業医と情報を共有しながら、状況に応じてステップを調整することが重要です。ただし、連携には本人の同意が必要であり、また、主治医が連携を希望しないケースもあります。無理のない範囲で協力体制をつくっていきましょう。
周囲の従業員のフォローも忘れない
復職支援は、休職者だけを見ていれば良いわけではありません。休職によって他の従業員の業務負担が増えることがあり、そのままにしておくと不満や疲労の蓄積につながります。
定期的に面談を行う
困りごとや負担を早めに把握する
配置や業務量の調整を検討する
このように周囲のサポートを同時に整えることで、チーム全体の負担を軽減できます。
復職直後の働き方に十分な配慮をする
復職したからといって、すぐに元の働き方に戻れるわけではありません。
勤務時間を短く調整する
業務量を抑える
負担の大きい仕事を避ける
こうした配慮が、再発防止と長期的な定着につながります。
「試し出勤制度」で段階的に慣らしていく
復帰までのステップとして、「試し出勤制度(リハビリ勤務)」を使う方法もあります。
出勤だけしてみる
軽作業のみ行う
短時間だけ職場に滞在する
といった形で少しずつ負荷をかけ、心身の状態を確認しながら復帰を進めます。ただし導入する際は、賃金・労災などの扱いや、制度上の位置付けなどを労使で十分に話し合い、ルールを明確にしておく必要があります。
社内だけで難しい場合は、外部の支援を活用する
復帰支援には専門的な知識が必要になることもあります。社内で十分な対応が難しい場合は、以下のような外部資源を使うことも有効です。
医療機関
地域産業保健センター
EAP(従業員支援プログラム)
外部EAPには、復職支援を含む産業保健サービスを総合的に提供している機関もあり、ニーズや予算に応じて活用できます。
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エムスリーヘルスデザインでは、医療・ヘルスケア領域で培った専門性をもとに、企業向けのメンタルヘルス支援サービス「EAP」を提供しています。
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提供している主なサービス
専門家によるカウンセリング:公認心理師などの有資格者が、プライバシーを守りながら従業員の相談に応じます。
人事・産業医との連携支援:個人の悩みへの対応だけでなく、組織全体の環境改善にもつなげます。
ストレスチェックの一括サポート:年1回のストレスチェックから面談、改善提案まで、企業の負担なく実施できます。
EAP導入による効果
EAP導入により、次のような効果が期待できます。
離職の抑制:メンタル不調の早期発見・早期対応で、従業員の定着率が向上。
生産性アップ:心身のコンディションが整うことで、日々のパフォーマンスが安定します。
リスクマネジメントの強化:法令対応をサポートし、トラブルや訴訟リスクを低減。
企業価値の向上:「健康経営優良法人」取得に向けた取り組みも後押しします。
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