新卒内定者が受診する健康診断の種類新卒の内定者が企業に入社する際、健康診断の受診が求められる場合があります。企業が従業員に行う健康診断にはいくつかの種類が存在しますが、新卒内定者が主に受けるものとして、労働安全衛生法で義務付けられている「雇入れ時の健康診断」や、採用選考中に実施されることのある「採用選考時の健康診断」があります。これらの健康診断は目的や実施時期が異なります。以下にそれぞれの詳細を説明します。「健診業務の負担を減らすには?DXツールの成功事例」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します雇入れ時の健康診断労働安全衛生法に基づき、事業者は常時雇用する労働者を雇い入れる際、医師による健康診断の実施が義務付けられています。これは「雇入れ時の健康診断」と呼ばれ、労働者が業務に適切に配置され、入職後の健康管理を効果的に行う目的で実施されます。原則として、労働者の入職時に行われます。パートやアルバイトの方も、雇用期間や労働時間に関する一定の要件を満たす場合は対象です。採用選考時の健康診断「採用選考時の健康診断」は、労働安全衛生規則第43条に「雇い入れ時の健康診断」が規定されていることを理由に、一部で実施されている健康診断です。しかし、「雇い入れ時の健康診断」は本来は採用選考時に実施して応募者の採否を決定するためのものではありません。「採用選考時の健康診断」が法律で直接禁止されているわけではありませんが、選考過程で健康診断を行うと、応募者の適性や能力に関係のない情報を把握し、就職差別につながる可能性があります。したがって、採用選考時に健康診断を実施する場合は、職務遂行能力を判断するために、合理的かつ客観的な必要性が認められる項目に限定すべきです。必要性の低い検査項目は避けるべきであり、特にHIV感染の有無や業務に支障がない色覚に関する検査は、原則として採用選考目的で行うべきではありません。出典:厚生労働省大阪労働局「採用選考時の健康診断について」雇入れ時の健康診断の検査項目労働安全衛生規則第43条により、新卒内定者が入社時に受診する「雇入れ時の健康診断」では必須の検査項目が定められています。これらの項目は、新規労働者の健康状態を把握し、その後の適切な就業上の措置や健康管理に役立てることを目的としており、具体的には以下の項目が定められています。既往歴及び業務歴の調査自覚症状及び他覚症状の有無の検査身長、体重、腹囲、視力及び聴力(1,000Hz及び4,000Hz)の検査胸部エックス線検査血圧の測定貧血検査(血色素量、赤血球数)肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)血糖検査 (空腹時血糖、ヘモグロビンA1cのいずれか、または随時血糖)尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)心電図検査上記の検査項目は、労働者の健康状態を網羅的に把握するために不可欠です。定期健康診断では、年齢や医師の判断によって一部項目を省略できる場合がありますが、雇入れ時の健康診断では原則として省略は認められません。労働安全衛生法を遵守するためには、全ての項目を正確に実施することが求められます。また、上記の項目の他に、特定の業務に従事する労働者については、労働安全衛生規則等で定められた特殊健康診断(じん肺健康診断、鉛健康診断、有機溶剤健康診断、歯科健康診断など)や通達に基づく健康診断が別途必要となる場合があります。新卒内定者がこれらの業務に配置される場合は、該当する健康診断も併せて実施する必要があります。出典:厚生労働省栃木労働局「定期健康診断等について」出典:厚生労働省秋田労働局「健康診断を実施し、事後措置を徹底しましょう」「健診業務の負担を減らすには?DXツールの成功事例」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します新卒内定者が受診する健康診断の費用負担新卒内定者が入社時に受ける健康診断の費用負担は、内定者と企業双方にとって重要な関心事です。企業が従業員に対して行う健康診断には様々な種類がありますが、新卒内定者を対象とする健康診断の費用負担は、その種類によって扱いが異なります。雇入れ時の健康診断の費用負担労働安全衛生法第66条により、事業者は常時使用する労働者に対し、医師による健康診断を実施する義務があります。また、労働安全衛生規則第43条では、労働者を雇い入れる際の健康診断(雇入れ時健康診断)が規定されています。雇入れ時の健康診断は法的に事業者の義務であり、その費用は原則として事業者が負担すべきと解釈されます。これは、健康診断が労働者の健康管理と適正配置という事業目的のために、事業者の責任において実施されるためです。出典:厚生労働省栃木労働局「定期健康診断等について」採用選考時の健康診断の費用負担採用選考時に行われる健康診断は、労働安全衛生法上の事業者の義務ではないため、費用負担に関する法的規定もありません。しかし、企業が採用選考の必要性から実施するため、一般的には企業側が費用を負担する慣習となっています。費用負担に関する実務上の留意点健康診断の費用負担について、新卒内定者との間で認識の齟齬が生じないよう注意が必要です。具体的には、健康診断の種類、受診方法(指定医療機関の有無を含む)、費用負担に関する方針を事前に明確に伝え、書面(内定通知書や入社案内など)で明記することが重要です。特に、企業が指定する医療機関以外での受診を認める場合の費用精算ルールなどを明確にしておくと、より円滑に進みます。「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します新卒内定者の健康診断結果次第で内定取り消しはできる?労働安全衛生法に基づいた健康診断結果の取り扱いについて、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では、事業者が労働者の健康確保に必要な範囲を超えて不利益な取り扱いをすることを禁じています。具体的には、健康診断の結果を理由とした解雇、契約更新の拒否、退職勧奨、不当な配置転換などが挙げられています。採用内定は、多くの判例において労働契約が成立したと見なされており、内定取り消しは解雇に準ずるものとして扱われることがあります。労働契約法では、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない解雇は無効とされています。したがって、新卒内定者の健康診断結果のみを理由に内定を取り消すことは、労働者の健康確保に必要な範囲を超えた不利益な取り扱いに該当し、法的に認められない可能性が非常に高いと言えます。出典:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」出典:厚生労働省「事業主の皆様へ」出典:厚生労働省秋田労働局「健康診断を実施し、事後措置を徹底しましょう」新卒内定者の精神疾患の把握について労働安全衛生規則では、雇入れ時健康診断の必須項目として既往歴や自覚症状・他覚症状の検査が定められていますが、精神疾患に特化した直接的な検査項目はありません。採用選考時に精神疾患の有無や程度を把握する健康診断項目を設定する際は、職務遂行能力との関連性を慎重に判断し、合理的かつ客観的な必要性が認められる場合に限るべきで、安易な実施は就職差別につながる可能性があります。入社後の定期的なストレスチェック制度は、労働者の精神的な健康状態を把握し、適切な配慮を行うための仕組みとして労働安全衛生法で定められています。ストレスチェックは労働者のストレス状況の把握、本人への気付きの促進、集団分析を通じた職場環境改善を目的としています。労働者の健康に関する個人情報、特に精神疾患に関する情報は非常にセンシティブであり、その取扱には最大限の配慮が必要です。事業者は、健康診断の結果に基づき、労働者の健康確保に必要な範囲を超えて不利益な取扱い(解雇、不当な配置転換等)を行うことは禁じられています。産業保健業務従事者以外の者が健康情報を取り扱う際は、就業上の措置を実施する上で必要最小限のものに加工し、診断名などの詳細な医学的情報は扱わせるべきではありません。新卒内定者の精神疾患の把握においては、採用選考段階での深入りは就職差別の観点から慎重であるべきです。入社後の健康管理体制の中で、法律に基づいた健康診断やストレスチェック制度などを活用し、適切なプライバシー保護のもとで必要な情報を把握し、本人の同意を得た上で適切な就業上の配慮につなげることが重要です。出典:厚生労働省大阪労働局「採用選考時の健康診断について」出典:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」「メンタルヘルス不調者対応の勘所」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します新卒内定者の健康診断結果で異常値が出た場合の対応方法事業者は、健康診断で異常所見があると診断された内定者(入社後は労働者)に対して、労働安全衛生法に基づいた適切な対応を行う必要があります。具体的には、まず労働者の健康保持に必要な措置について、医師または歯科医師(医師等)の意見を聴くことが義務付けられています(労働安全衛生法第66条の4)。産業医がいる事業場では産業医から、いない場合は労働者の健康管理に必要な医学的知識を有する医師等(地域産業保健センターの利用も推奨)から意見を聴くことが適切です。意見聴取を円滑に行うためには、労働者の作業環境、労働時間、作業内容、過去の健康診断結果等の情報を提供すると良いでしょう。健康診断の結果だけでは情報が不足している場合は、労働者との面接機会を設けることも有効です。医師等から聴取する意見には、主に以下の内容が含まれます。就業区分およびその内容についての意見: 通常勤務、勤務に制限を加える必要のある「就業制限」、勤務を休む必要のある「要休業」の区分と、それぞれの具体的な措置(例:労働時間の短縮、作業転換、休暇、休職等)。作業環境管理および作業管理についての意見: 健康診断結果を踏まえ、作業環境測定の実施や作業方法の改善等が必要か。事業者は、医師等の専門家の意見を十分に考慮し、必要と認める場合には、労働者の実情を踏まえ、就業場所の変更や作業転換、労働時間短縮といった就業上の措置を講じる義務があります(労働安全衛生法第66条の5)。就業措置を決定するにあたっては、事前に労働者の意見を聞き、十分な話し合いを通じて了解を得るように努めることが重要です。また、健康診断の結果、再検査や精密検査が必要とされた労働者には、速やかに受診を促すことが望ましいです。健康保持に努める必要のある労働者には、医師や保健師による保健指導を行うよう努める必要があります(努力義務)。重要な点として、異常値が出たという事実だけで不利益な取り扱いをするのではなく、医師等の専門的な意見に基づき、本人の健康状態に配慮した適切な就業上の措置を講じ、安心して働ける環境を整備することが求められます。出典:e-gov法令検索「労働安全衛生法」「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します新卒内定者の健康診断結果の保管について労働安全衛生法に基づき、事業者は新卒内定者を含む全労働者の健康診断結果を記録・保存する義務があります。これには、雇入れ時の健康診断も含まれます。この記録保存は、労働者の健康状態を把握し、入社後の適切な健康管理や就業措置に役立てるためのものです。具体的には、健康診断個人票を作成し、原則として5年間保存します。ただし、特定の有害業務従事者の特殊健康診断結果は30年間の保存が必要です。保存方法は紙媒体のほか、電磁的記録も認められていますが、適切な管理が求められます。健康診断結果は機微な個人情報であるため、事業者は個人情報保護に関する指針を踏まえ、最大限の配慮と適切な取り扱いが必要です。特に、産業保健業務従事者以外が取り扱う場合は、就業上の措置に必要な最小限の情報に加工し、医学的情報は取り扱わせないようにする必要があります。二次健康診断の結果は、継続的な健康管理のために保存が望ましいですが、義務ではなく、保存には労働者の同意が必要です。事業者は、これらの法令や指針に基づき、労働者の健康診断結果を適切に管理・保管する体制を整備する必要があります。出典:e-gov法令検索「労働安全衛生法」出典:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」「健診業務の負担を減らすには?DXツールの成功事例」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します