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ストレスチェック

公開日:

2025/09/30

更新日:

2025/12/26

ストレスチェックが全企業で義務化!背景やストレスチェックの導入方法を解説

上田莉子(産業医)

ストレスチェックが全企業で義務化!背景やストレスチェックの導入方法を解説

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、会社が用意するアンケートに従業員が回答し、自分のストレスの程度を数値化・客観化して把握できる仕組みです。定期的に実施することで、次のような利点があります。

  • 従業員自身がストレスに早期に気づき、心の不調を防ぐきっかけとなる

  • 職場単位での集計結果を基に、環境改善の方策を考えられる

すなわち、ストレスチェックは「従業員一人ひとりの健康維持」と「職場の組織改善」を両立させるための大切な制度といえます。

この制度は、個々の働き手の状態を確認するだけではなく、組織全体のストレス状況を可視化し、改善活動に活かすことに本質的な意義があります。

その結果として、

  • 働きやすい職場環境の形成

  • 組織全体の活力や生産性の向上

  • 安心して働ける安全な職場づくり

といった効果が期待されます。まさに、国が進めている「心の健康を守るための重要な施策」の一環と位置づけられます。

関連記事:派遣社員のストレスチェック、義務は派遣元?派遣先?解説

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令和10年度には50人未満の事業所もストレスチェックが義務化

ストレスチェック制度は、2015年12月1日より施行され、労働安全衛生法に基づき「労働者が50名以上在籍する事業所」に対して実施が義務づけられました。

その後、2025年5月に労働安全衛生法と作業環境測定法が改正され、2028年までに企業規模を問わずすべての事業場でストレスチェックを行うことが必須とされました。

この改正により、これまで努力義務とされていた従業員50人未満の事業所も、今後は正式に制度を導入し、実施体制を整えることが求められます。

関連記事:ストレスチェックと衛生委員会の関係|役割と進め方を解説

参考:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497667.pdf

ストレスチェック義務化に至った背景と目的

すべての事業場でストレスチェックを義務とする改正法が成立したのには、主に3つの要因があります。

1. 精神障害に関する労災が増加傾向

厚生労働省が発表した令和6年度の過労死等の労災補償状況によれば、精神障害に関連する労災補償の請求件数は3,780件(前年比+205件)、うち支給決定件数は883件(前年比+173件、過去最多)と報告されています。

長時間労働、職場での強いストレスやハラスメントなどを背景とする精神障害の労災は年々深刻化しており、これに対応するため予防的取り組みとしてストレスチェックを一層強化すべきという機運が高まりました。

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参考:厚生労働省「令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59039.html

2. 小規模事業場での導入率の低迷

ストレスチェック制度実施状況(令和5年)の調査では、事業場の規模によって実施率に大きな開きが見られました。

  • 労働者10〜29人規模:33.1%

  • 労働者30〜49人規模:41.8%

50人未満の事業場については、従来「努力義務」にとどまっていたため普及が進まず、制度定着の妨げとなっていました。そのため、努力義務の枠組みでは限界があると判断され、全事業場への義務化に踏み切ることとなりました。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度 の実施状況(令和5年)」https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001431177.pdf

3. 政策目標との乖離

厚労省は第14次労働災害防止計画(令和4〜8年度)において、従業員50人未満の小規模事業場でのストレスチェック実施率を2027年度までに50%以上に引き上げるという数値目標を掲げています。

しかし、現状の実施率は目標を大きく下回っており、努力義務のままでは改善は難しいと明らかになりました。その結果、政策目標の達成を確実にするため、制度の法的義務化が選択されたのです。

参考:厚生労働省「労働災害防止計画について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197308.html

小規模事業所でのストレスチェックの今後

現在、従業員が50人未満の小規模事業場におけるストレスチェックの実施方法について、実情に即した形での検討が進められています。検討会では「大規模事業場と同じ基準をそのまま小規模事業場に適用するのは現実的ではない」との意見が示されています。

特に50人未満の職場では、次のような制約があるため、実施方法に柔軟な工夫が求められています。

  • 産業医を置く義務がなく、医師が不在のケースが多い

  • 人数が少なく匿名性を守りにくいため、プライバシー確保が難しい

  • 人的・財政的な余力が乏しい

こうした課題に対処するため、厚生労働省は小規模事業場向けのストレスチェック実施マニュアルを整備中であり、令和8年度に公開される予定です。今後は、その指針に沿って各事業場が体制を構築していくことが求められます。動向を把握し、早めに準備を進めることが重要となります。

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参考:厚生労働省「「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループの設置について」

https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001543077.pdf

ストレスチェックの実施手順

方針・方法・役割決めなどの導入準備、質問票の配布、評価、結果の通知、保存というストレスチェックの実施、面接指導・就業配慮、職場環境改善(努力義務)という流れで行います。

それぞれについて、詳しく説明します。

1.導入前の準備

  • 方針の明示:「メンタル不調を防ぐためにストレスチェックを行う」と会社として公表する。

  • 実施方法の決定(衛生委員会で協議):

    実施者・実施時期・質問票内容

    高ストレス者の選定基準

    面接指導を依頼する医師

    集団分析の方法、結果の保存先

決定内容は社内規程として明文化し、全社員に周知。

  • 役割分担の決定:

    制度全体の管理者

    実施者(医師・保健師・心理専門職など)

    実施事務従事者:データ入力や結果送付などを行います。人事権を持つ人は選任不可です。

    面接指導を担当する医師

2.ストレスチェックの実施

質問票の配布と記入

国推奨の57項目票か、自社で作成した質問票を利用します。紙・オンラインどちらでも実施可能です。

質問票の回収

実施者または事務従事者が回収します。人事部や第三者が内容を見てはいけません。

ストレス度の評価自覚症状が強い人、環境やサポートが極端に乏しい人を「高ストレス者」と判定します。

結果通知

実施者が本人に直接通知します。事業場は本人の同意がなければ結果を見られないきまりです。

結果の保存

実施者(または従事者)が厳重に管理します。第三者が閲覧できないように保護します。

3.面接指導と就業上の措置

申出と実施

高ストレスと判定された労働者が申し出た場合、1か月以内に医師の面接指導を実施します。

関連記事:ストレスチェックにおける産業医の役割は?高ストレス者の面接指導まで解説

医師の意見聴取

労働時間の調整など就業上の措置を講じます。面接後、1か月以内に意見を聴く必要があります。

記録の保存

面接指導の結果は5年間の保存が必要です。実施日、労働者名、医師名、勤務・ストレス状況、医師の意見を記録します。

4.職場分析と環境改善(努力義務)

集団分析

部署やチーム単位で結果を集計します。匿名性を保つため、対象の集団は10名以上であることが原則です。対象集団が10名未満の場合は全員の同意が必要となります。

改善活動

集計結果をもとに、職場環境を改善します。毎年繰り返すことで変化を把握でき、メンタル不調を予防します。

以上がストレスチェックの具体的な手順になります。

ストレスチェックは、単なる形式的な調査ではなく、社員の健康と職場の安全を守るための仕組みとして活用することが大切です。

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ストレスチェック外部委託に関する公的見解

ストレスチェックは自社で行うこともできますが、外部委託も可能です。ここで、ストレスチェックの外部委託について、公的機関の見解をみていきましょう。

外部委託の現状

現在、ストレスチェックを自社で完結させず、外部の専門機関へ依頼している事業場は全体の7割を上回ります。

委託先として最も多いのは健康診断を実施している医療機関で、全体の約4割を占めています。次に多いのがEAP(従業員支援プログラム)を提供する組織です。

近年は特に「従業員のプライバシーを守る」視点から、結果通知や個人情報の管理も含めて外部に任せる事業場が増加しています。

厚労省の検討会での整理

厚生労働省が開催するストレスチェック制度や職場のメンタルヘルス対策に関する検討会」では次のような方向性が示されています。

50人未満の事業場においては、産業医がおらず適切な情報管理等が困難な場合もあるので、原則として、ストレスチェックの実施は労働者のプライバシー保護の観点から外部委託することが推奨される。

すなわち、大規模な職場においては効率性や安心感、小規模な職場においては情報保護の観点から、外部委託を活用することが有効な選択肢となります。

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参考・引用:厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第7回資料」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44232.html

外部委託に関するメリットとデメリット

公的機関では推奨されているストレスチェックの外部委託ですが、委託にはメリットとデメリットが存在します。この章では、ストレスチェックの外部委託によるメリットとデメリットについてご紹介します。

ストレスチェックの委託によるメリット

ストレスチェックを社内だけでなく外部に任せることで、次のようなメリットが得られます。

1.社内負担の削減

ストレスチェックを自社で全て対応する場合、調査票の作成や配布、集計、分析、さらに面接指導の手配まで幅広い業務が発生します。そのため担当者の負荷は少なくありません。

外部委託を利用すれば、これらの複雑な工程を専門機関に任せられるため、効率的に制度を運用できます。特に「集団分析にまで手が回らない」といった事態を防ぎやすくなります。

2.匿名性の確保

第三者である外部機関が集計・分析を担うことで、従業員は「会社に個人情報が漏れるのでは」という懸念を持たずに回答できます。その結果、より正直な回答を得やすくなり、従業員の安心感や調査精度の向上につながります。

3.専門的な対応が可能

ストレスチェックは単なる集計作業ではなく、結果をどう解釈し職場改善に活かすかが重要です。外部の専門組織であれば、職種や組織文化を踏まえた分析や改善提案が可能です。厚労省も「集団分析は、適切に読み取り改善策を検討できる者が行うべき」としています。

加えて、産業医や公認心理師などの資格を持つ専門職が関与し、面接指導やフォローアップまで専門的に対応できるサービスもあり、安心材料。

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参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル[改訂版]」https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

ストレスチェックの委託によるデメリット

一方で、委託にはデメリットも存在します。順番にみていきましょう。

1.コストの発生

外部機関に依頼すれば当然費用がかかります。基本料金や受検者単価をあらかじめ確認し、契約条件を明確にしておくことが重要です。

2.運用の透明性が下がる可能性

委託した場合、社内で進捗や受検者数を直接把握しにくくなります。委託先から定期的に「受検人数」「集団分析の完了時期」などを報告してもらう仕組みを作ることが必要です。

3.柔軟さに欠ける場合がある

自社独自の勤務形態や社風に合わせた調整を外部機関が十分に行えないことがあります。突発的な要望や急なスケジュール変更に対応できない場合もあるため、現場の実情を理解してくれる委託先を選ぶことが望まれます。

以上、ストレスチェックの外部委託によるメリットとデメリットについてご説明しました。

ここで、重要なのは、「外部に任せても最終責任は事業者にある」という点です。厚労省のマニュアルにも「委託しても労働安全衛生法上の義務主体は事業者であり、その責任は免れない」と明記されています。委託先の対応が不十分だった場合でも、企業側が責任を問われる可能性があるのです。

そのため、従業員に「情報はどう扱われているのか」「会社がどこまで関与しているのか」といった不安を与えないよう、FAQの整備や事前説明などを通じて透明性を確保することが不可欠です。

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参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル[改訂版]」https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

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