産業医に復職不可とされた社員への対応
「主治医からは復職可能と言われているのに、産業医からは『まだ難しい』と判断された」
休職中の社員をめぐり、このような状況に直面し、対応に悩んだことはありませんか。
社員本人は「早く復帰したい」と強く訴え、現場からは人手不足を理由に早期復帰を求める声が上がる。しかしその一方で、産業医が「現時点での復職は困難」と判断している以上、その意見を無視することはできません。
「このまま休職を延長すべきなのか」
「会社として、どこまで関与してよいのか」
「本人との関係が悪化してしまわないだろうか」
企業の担当者、現場の管理職、そして休職者本人、それぞれの立場で葛藤や不安が生じやすい局面です。
産業医が復職困難と判断した場合でも、最終的に復職の可否を決定するのは会社です。
産業医の意見には法的な決定権がないためです。
しかし、病状の回復が不十分なまま復職を急がせ、結果として健康被害が生じた場合、企業は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。「会社が決められる」一方で、「会社が責任を負う」判断でもあるのです。
産業医に復職を認められなかった場合、企業には判断と配慮の両立が求められます。
本記事では、そのような場面で企業が押さえておくべき基本的な考え方と、トラブルを防ぐための対応のポイントを整理して解説します。
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参考:厚生労働省「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
産業医が「復職困難」と考える時
では、そもそも、どういうときに産業医は休職者を「復職困難」と判断するのでしょうか。
その原因は、休職者側と企業側の大きく分けて2種類あります。
また、その判断は病院での主治医と相反するケースもあります。順を追ってみてみましょう。
休職者側の理由
主に休職者本人が業務を行えるほど回復していない場合で、産業医が現時点での復職が不可能と判断する根拠には、次のようなものがあります。
安全に通勤できない:
例えば、交通機関の途中でパニックなどに陥らないことが重要です。
健康状態および体力が回復していない:
健康状態が改善しきっていない場合は、復職が認められません。
規則正しい生活を送れていない:
メンタルヘルス不調の回復に必要なのは規則正しい生活であり、また、規則正しい生活なしに職務の継続はできません。
復職の意思が確認できない:
本人に復職の意思がない、あるいは心理的な準備が整っていない場合、無理な復職は再発リスクを高めるため、慎重な判断が求められます。
このような理由で、産業医は休職者の復職を認めないことがあります。
企業側の理由
企業側での受け入れ態勢が整っておらず就労困難である場合にも、産業医が復職困難と判断するケースがあります。
業務内容との適合性に課題があるケース:
休職者の現在の心身の状態や業務遂行能力を踏まえると、従来どおりの業務を担うことが難しいと判断される場合があります。たとえば、長時間にわたる高い集中力が求められる業務や、強い対人対応を伴う職務などは、復職直後の負担が大きくなりやすいといえるでしょう。
必要な配慮を実現できないケース:
本来であれば、短時間勤務や業務量の調整、配置転換といった配慮が求められるものの、組織体制や人員配置の都合により、現実的に対応できない場合もあります。このような状況では、無理な復職がかえって本人の不調を長引かせる可能性があります。
職場環境に未解決の問題が残っているケース:
休職に至った背景に、職場での人間関係の悪化やハラスメントが関与している場合、問題が解消されないまま職場に戻ることは大きなリスクとなります。根本的な改善がなされていない状態での復職は、再び休職に至る可能性が高いと考えられます。
以上のような場合にも、すみやかな復職が困難と考えられます。
主治医と産業医の意見が異なる場合もある
産業医は病院での主治医とは異なり、症状の回復の程度だけでなく、仕事の内容や負荷の状況から復職までを判断する役割を持っています。
このため、病状と生活を主な軸としてみている主治医よりも、より明確に就労についての条件を休職者の病状と照らし合わせ、復職を判断することが可能です。
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産業医の判断と企業に求められる安全への責任
さて、産業医の判断に法的な決定権がないとはいえ、どの程度の重さで産業医の言葉を尊重すべきなのでしょうか。
企業には、労働契約法第5条に基づき、従業員が心身の健康を損なうことなく働ける環境を整える責任があります。いわゆる「安全配慮義務」です。
産業医は、この責任を果たすために、医学的見地から従業員の健康状態を評価し、企業に専門的な助言を行う役割を担っています。
そのため、産業医が「現時点での復職は難しい」と判断した場合、企業はその意見を軽視すべきではありません。安全配慮義務の観点からは、従業員の復職を急がず、慎重に判断することが基本的な対応となります。
もし産業医の意見を考慮せずに復職を進めた結果、健康状態の悪化や業務中の事故が生じた場合には、企業は安全配慮義務を十分に果たしていなかったとして、法的責任を問われるおそれがあります。復職判断においては、産業医の専門的な見解を重要な判断材料として位置づけることが不可欠です。
産業医が復職不可と判断した場合の企業の対応
産業医が復職困難と判断した場合、企業は基本的にはその判断に従うこととなります。
その際には、産業医の判断を従業員に伝えるのですが、納得感と安心感を損なわない説明であることが欠かせません。結論のみを伝えるのではなく、判断に至った背景や今後の方向性を丁寧に共有することが重要です。
では、具体的にみていきましょう。
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従業員への説明と情報共有における留意点
産業医の判断内容を分かりやすく伝える
まず、産業医が復職を認めなかった理由について、医学的観点から分かりやすく説明します。
たとえば、
現時点では心身の回復が十分とはいえず、就業再開によって不調が再燃する可能性が高いこと
特定の業務負荷や勤務形態に耐えられる状態に達していないと評価されたこと
など、健康面のリスクに焦点を当てて伝えることで、「会社の都合ではない」ことを明確にします。
今後の対応方針と選択肢を具体的に示す
復職を認めないという判断と同時に、今後の見通しや取り得る選択肢を提示することが重要です。
休職継続の選択肢:
就業規則上、休職期間に余裕がある場合には、引き続き療養に専念してもらうことを提案します。その際、傷病手当金など、休職中に利用可能な公的給付についても情報提供すると、経済的不安の軽減につながります。
段階的な復職制度の検討:
産業医から「一定の回復が見られれば復職の可能性がある」との見解が示されている場合には、短時間勤務や負担の少ない業務から始める段階的な就業制度を検討する余地があります。ただし、こうした制度は企業ごとの運用に委ねられているため、就業規則や社内制度の有無を事前に確認する必要があります。
配置や業務の見直し:
元の職務内容では負担が大きい場合でも、現在の体調や能力に応じた業務であれば就業可能となるケースもあります。部署異動や業務内容の調整によって対応できるかどうか、現実的な範囲で検討することが望まれます。
定期的な連絡・面談の継続:
休職中であっても、定期的な連絡や産業医面談を通じて状況を確認することは重要です。従業員の孤立感を防ぐとともに、回復状況の変化に応じた支援策を検討しやすくなります。
復職に向けた条件を共有する
従業員への説明で重要なことの一つに、将来的な復職を見据えた条件の共有があります。
将来的な復職を見据え、次のような情報を共有します。
どのような状態になれば復職可能と判断されるのか
再評価の目安時期はいつか
この手段をとることで、従業員が目標を持って療養に取り組みやすくなります。
外部支援を利用して休職者の復職をスムーズに
産業医の判断により復職を見送ることになった場合、企業内の対応だけで状況を改善しようとすると、担当者や管理職の負担が大きくなりがちです。また、従業員本人にとっても、「会社とのやり取り」だけが続くことは、心理的なプレッシャーにつながることがあります。
このような場面では、EAP(従業員支援プログラム)や外部専門家の活用を早い段階で検討することが有効です。
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なぜEAP・外部支援が有効なのか
EAPは、従業員本人だけでなく、企業側の対応を間接的に支える仕組みでもあります。
たとえば、
復職できない状況が長期化している
本人が強い不安や不満を抱えている
人事や上司との直接対応が難航している
ハラスメントや人間関係の問題が背景にある
といったケースでは、第三者が介入することで状況が整理されやすくなります。
EAPにつなげる具体的なタイミング
次のようなタイミングは、EAPや外部支援を案内する適切な機会といえます。
産業医から「現時点では復職困難」との意見が出たとき
休職期間の延長を従業員に説明する場面
復職の見通しが立たず、本人の不安が強まっていると感じたとき
人事・管理職だけでの対応に限界を感じたとき
「問題が深刻化してから」ではなく、早めに案内することがポイントです。
従業員への伝え方の例
EAPを案内する際は、「問題があるから使わせる」という印象を与えない配慮が必要です。例えば、次のように外部支援につなげるとよいでしょう。
「今は復職に向けて少し時間が必要な状況です。会社としても、安心して療養に専念していただけるよう、外部の専門家に相談できる窓口を設けています。医療とは別に、生活面や気持ちの整理について相談できる場として、必要に応じて活用してください。」
このように、支援の選択肢の一つとして中立的に提示することが重要です。
企業側にとってのメリット
EAPや外部支援を活用することで、
企業が直接踏み込みにくい領域(心理面・家庭問題など)をカバーできる
対応の公平性・客観性を保ちやすくなる
担当者や上司の精神的負担を軽減できる
といったメリットがあります。結果として、従業員との関係悪化やトラブルを防ぎ、将来的な円滑な復職や職場定着につながる可能性が高まります。
産業医が復職を認めない状況は、企業にとっても従業員にとっても判断が難しい局面です。
だからこそ、社内対応だけに頼らず、EAPや外部支援を活用することが重要になります。
ストレスチェックやEAPは、問題が顕在化した後の対処だけでなく、再休職を防ぐための予防的な支援としても有効です。
復職判断に悩む場面こそ、これらの外部資源を活用するタイミングといえるでしょう。
復職判断に迷う際、会社が直接踏み込めない「生活面の課題」や「家族の不安」がボトルネックになることも少なくありません。エムスリーヘルスデザインのEAPなら、本人だけでなくご家族も相談回数無制限でサポート。 専門家が中立的な立場で伴走することで、スムーズな復職合意を支援します。
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エムスリーヘルスデザインのEAPは相談回数無制限
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まず、人事・管理職の方々には、専任の心理士が企業や組織の環境改善について具体的な提言を行います。さらに、メンタル面に課題を感じながら働く従業員に対し、専門家とのカウンセリングを通じて心の健康維持や早期の適切な対応をサポートします。
また、ストレスチェック後の集団分析結果や現場の課題を踏まえた研修プログラムも提供。ラインケアに特化した内容はもちろん、セルフケアまで幅広くカバーします。企業・官公庁での豊富な研修実績を持つスタッフが、最適な内容で健康経営を力強く支援します。
提供サービスの概要
専門家による相談対応:
公認心理師など資格を持つカウンセラーが、従業員の相談に応じ、安心できる支援を行います。
人事・産業医との協働:
個人対応にとどまらず、職場環境の改善へとつなげる仕組みを構築。
ストレスチェックとの連動:
制度導入後の高ストレス者面談や職場改善まで一貫してサポートします。
充実したサポート体制
メンタルヘルス以外の問題も回数無制限で相談可能
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