企業が行う健康診断には、一般的な健康診断のほかに特殊健康診断があります。特殊健康診断は有害物質を取り扱う職場環境や健康リスクがある業務内容の従業員に対して実施が義務付けられており、対象者に特殊健康診断が実施されなかった場合は法律違反になるため、企業は対象基準や詳細を正しく理解する必要があります。しかし、特殊健康診断を受ける予定がある方は実際にどのような健康診断をするのか分からないこともあるでしょう。そこで本記事では、「対象となる業務内容」「具体的な検査項目」「実施時期」「一般健康診断との違い」など分かりやすく解説していきます。「健診業務の負担を減らすには?DXツールの成功事例」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します特殊健康診断とは特殊健康診断とは、有害物質を取り扱う職場環境や健康リスクがある業務の従業員に対して行う健康診断であり、一般的な健康診断とは異なる検査を行います。有機溶剤や鉛、石綿などの特定の有害物質に関する検査のほか、高気圧や放射線 などの物理的な要因に関する検査も含まれます。有害業務による従業員の身体の不調を早期発見し、適切な対応をとることで安心かつ安全に働けるようにすることを目的としています。特殊健康診断は、従業員の健康を守るために重要な役割を果たしており、主に「特殊健康診断」「じん肺健康診断」「歯科医師による健康診断」の3つに分類されます。特殊健康診断特殊健康診断は、労働安全衛生法を基に対象となる業務内容が指定されています。具体的には以下7つの業務が特殊健康診断の対象となっており、それぞれ検査項目や実施期間が異なります。1. 高気圧業務2. 放射線業務3. 特定化学物質業務4. 石綿業務5. 鉛業務6. 有機溶剤業務7. 四アルキル鉛業務じん肺健康診断じん肺健康診断は、じん肺法に基づいて実施される健康診断で、粉じんを吸い込むことによって肺に影響を及ぼす可能性のある業務に従事する従業員対象に実施される健康診断です。じん肺とは、長期間にわたって体内に蓄積された粉じんが原因で発症する肺の疾患です。主に金属、鉱物、石綿などの微細な粒子が関連しています。歯科医師による健康診断歯科医師による健康診断は、労働安全衛生法に基づいて実施される健康診断で、特定の物質を取り扱う環境において、口腔内の健康が重要視される場合に実施されます。塩酸、硫酸、硝酸、亜硫酸、フッ化水素、黄リンなど、歯やその周辺組織に有害な物質を発散する場所で働く従業員が対象となります。特殊健康診断の対象者特殊健康診断の対象者は、有害物質を取り扱う など健康障害のリスクがある業務に従事している従業員を指します。労働安全衛生法等 により定期的な実施が義務付けられており、業務内容によって実施頻度や検査項目が異なります。「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します特殊健康診断と一般健康診断の違い特殊健康診断と一般健康診断の違いは、以下の通りです。 特殊健康診断一般健康診断目的特定の業務における健康リスクから従業員の健康と安全を守るため健康状態の確認や病気の早期発見のため対象者特定の業務に従事している従業員全ての従業員を対象にしており、物質や労働環境は関係ない検査内容業務の有害要因に応じた専門的な検査身体検査、血液検査、尿検査、心電図、X線検査など幅広い検査内容頻度法律に基づいて定期的に行われる1年以内ごとに一回一般健康診断は職業や労働環境は関係なく、全ての従業員に対して行われる健康診断です。一方特殊健康診断は、特定の業務における健康リスクから従業員の健康と安全を守るために行われます。特殊健康診断の業務別の実施時期と検査項目特殊健康診断の対象である業務別の健康診断に関して、それぞれの検査項目と実施時期を詳しく解説します。「そのまま使える受診勧奨&受診報告フォーマット」資料ダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します高気圧業務健康診断高気圧業務健康診断は、高気圧環境で作業する従業員を対象に実施される健康診断です。高気圧下での作業による健康障害が生じる可能性があり、その早期発見を目的としています。対象者潜水業務、高気圧室内など高気圧環境で働く従業員実施時期・雇入れ時・高圧業務への配置替え時・6カ月以内ごとに一回検査項目<必ず実施すべき項目> 1:既往歴及び高気圧業務歴の調査2:関節、腰もしくは下肢の痛み、耳鳴りなど、自覚症状または他覚症状有無の検査3:四肢の運動機能検査4:鼓膜及び聴力の検査5:血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査6:肺活量の測定<医師が必要と判断した場合に追加で実施しなければならない項目>1:作業条件調査2:肺換気機能検査3:心電図検査4:関節部のエックス線直接撮影による検査 放射線業務健康診断放射線業務健康診断は、放射線を扱う業務に従事する従業員を対象に実施される健康診断です。この診断は放射線被曝の影響を早期発見し、従業員の健康を守ることを目的としています。対象者放射線を使用する職業(放射線技師、原子力発電所の従業員など)実施時期雇入れ時検査項目1:被ばく歴の有無の調査及びその評価2:白血球数及び白血球百分率の検査3:赤血球数及び血色素量またはヘマトクリット値の検査4:白内障に関する眼の検査5:皮膚の検査特定化学物質健康診断特定化学物質健康診断は、特定化学物質を取り扱う従業員を対象に実施される健康診断です。対象者特定化学物質を取り扱う業務をしている従業員実施時期・雇入れ時・特定化学物質取り扱い業務への配置替え時・6カ月以内ごとに一回※ベリリウム及びニッケルカルボニルを取り扱う労働者に対する胸部エックス線直接撮影による検査は1年以内ごと検査項目特定化学物質の種類によって変動する主に業務歴の調査、血液検査、尿検査、皮膚検査、呼吸器検査等を実施石綿健康診断石綿健康診断は、今まで業務において石綿(アスベスト)を取り扱ったことがある従業員を対象に実施される健康診断です。石綿は主に建設や断熱材、耐火材などに使用されてきました。体内に吸い込んでしまうと、石綿肺や肺がん、中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。対象者・石綿を取り扱う業務をしている従業員・現に雇用しており過去に石綿を取り扱ったことがある従業員実施時期・雇入れ時・石綿取り扱い業務への配置替え時・6カ月以内ごとに一回検査項目<必ず実施すべき項目>1:業務歴の調査2:石綿による咳・痰・息切れ・胸痛など、他覚症状・自覚症状の既往歴有無の検査3:咳・痰・息切れ・胸痛等の他覚症状・自覚症状の有無4:胸部X線写真検査<医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目>1:作業条件の調査2:胸部のX線検査の結果、異常な陰影がある場合で、医師が必要と認める場合、特殊なX線撮影による検査、喀痰の細胞診又は気管支鏡検査※特殊なX線撮影:胸部らせんCT検査のこと※上記の項目のみでは、曝露した石綿等による身体への影響の有無が確認できないこともあるため、医師が必要と判断した場合は検査項目を追加する鉛健康診断鉛健康診断は、鉛を取り扱う業務に従事している従業員を対象に実施される健康診断です。鉛ははんだ付けや建材、電池、塗料などに使用される金属であり、体内に蓄積すると貧血等の健康被害を引き起こす可能性があります。対象者鉛を取り扱う業務に従事している従業員実施時期・雇入れ時・鉛取り扱い業務への配置替え時・6カ月以内ごとに一回検査項目<必ず実施すべき項目>1:職務歴の調査2:作業条件の調査3:鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査。血液中の鉛量および、尿中のデルタアミノリブレン酸量の既往の検査結果の調査4:鉛による自覚症状または他覚症状と通常認められる症状の有無の検査5:血液中の鉛量の検査6:尿中のデルタアミノリブレン酸量の検査<医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目> 1:作業条件の調査2:貧血検査3:赤血球中のプロトポルフィリン酸量の検査4:神経科学的検査有機溶剤等健康診断有機溶剤等健康診断は、有機溶剤を取り扱う業務に従事している従業員を対象に実施される健康診断です。有機溶剤は塗料や接着剤、洗浄剤などの製造や使用において広く利用されています。高い濃度の有機溶剤にばく露(吸い込んだり、皮膚についた物質が体内に入ること)されることで中枢神経が作用を受けて急性中毒を生じたり、低濃度でも慢性的にばく露されることで肝臓や造血器等に影響を及ぼします。対象者有機溶剤を取り扱う業務に従事している従業員実施時期・雇入れ時・有機溶剤取り扱い業務への配置替え時・6カ月以内ごとに一回検査項目<必ず実施すべき項目>1:業務歴の調査2:作業条件の簡易な調査3:有機溶剤による健康障害の既往歴の調査。有機溶剤による健康障害の既往歴、自覚症状および他覚症状の既往歴の調査。尿中の有機溶剤の代謝物量に関する既往の検査結果の調査。有機溶剤による5及び7~10に掲げる項目の既往の異常所見の有無の調査。4:有機溶剤による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査5:有機溶剤中毒予防規則の別表で物質ごとに定められた検査項目 <医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目>6:作業条件の調査7:貧血検査8:肝機能検査9:腎機能検査10:神経学的検査四アルキル鉛健康診断四アルキル鉛健康診断は、四アルキル鉛を取り扱う業務に従事している従業員を対象に実施される健康診断です。四アルキル船は、現在は航空ガソリン用添加物としてのみ流通しています。これらの化合物は、神経系や造血器に対して有害な影響を及ぼす可能性があり、従業員に与える健康リスクがあります。対象者四アルキル鉛を取り扱う業務に従事している従業員実施時期・雇入れ時・四アルキル鉛取り扱い業務への配置替え時・6カ月以内ごとに一回検査項目<必ず実施すべき項目>1:業務歴の調査、作業条件の簡易な調査2: 四アルキル鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査、4~5に関する既往の検査結果の調査3:いらいらや不眠、悪夢、食欲不振、顔面蒼白、倦怠感、盗汗、頭痛、振額、四肢の腱反射亢進、悪心、嘔吐、腹痛、不安、興奮、記憶障害その他の神経症状又は精神症状の自覚症状又は他覚症状の有無の調査4:血液中の鉛量の検査5:尿中のデルタアミノレブリン酸量の検査<医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目>1:作業条件の調査 2.貧血検査 2:赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査3:神経学的検査じん肺健康診断の実施時期と検査項目じん肺健康診断は、じん肺法に基づいて、粉じんを取り扱う業務に従事している従業員を対象に実施される健康診断です。じん肺とは、粉じんを体内に吸い込むことで引き起こされる肺の疾患であり、咳、痰、息切れといった呼吸器症状だけでなく、結核、肺がんなどの合併症を引き起こす可能性があります。じん肺健康診断は4種類の区分がありますが、ここでは定期健康診断について取り上げます。対象者・粉じんを取り扱う業務に従事している従業員・過去に粉じんを取り扱う業務に従事し、じん肺管理区分が2又は3の従業員実施時期1~3年に一回 ※下記の表を参照検査項目1:粉じん作業の職歴の調査2:胸部エックス線直接撮影3:胸部臨床検査4:肺機能検査5:結核精密検査その他合併症に関する検査(3~4で疑いがある場合)引用:厚生労働省|労働安全衛生法等に基づく各種健康診断一覧表歯科医師による健康診断の実施時期と検査項目歯科医師による健康診断は、労働安全衛生法に基づき歯やその支持組織に有害な業務に従事する従業員を対象に実施される健康診断です。対象者塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを取り扱う業務に従事している従業員実施時期6カ月以内ごとに一回検査項目検査項目は明確に規定されていません。一般的には、業務歴、作業条件等の調査に加え、歯の酸蝕症(酸によって歯の表面が欠損すること)や、口内炎、歯肉炎、顎の痛みなどについて検査が行われます。「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します特殊健康診断実施後にするべきこと特殊健康診断の結果に応じて、企業は従業員の健康と安全を守るために適切な対応を実施する必要があります。そこで具体的な対応について詳しく解説します。事後措置の実施健康診断の結果に基づき、従業員の健康を保持するために必要な措置について医師または歯科医師の意見を聴くこととされています。また、それをもとに必要な場合は就業場所・作業内容・労働時間、深夜業の回数の見直しをするほか、作業環境測定の実施、施設・設備の設置や整備、医師・歯科医師の意見の安全衛生委員会への報告といった対応が求められています。作業環境・作業方法の確認と改善特殊健康診断の有所見者がみられた場合、それが職場の有害要因によるものかどうかを検討することが必要です。そのために、前述したように医師・歯科医師から意見を聴き、有害要因との関連が疑われる場合は、作業環境や作業方法が適切に保たれているかを確認し、必要に応じて改善策を取りましょう。具体的には、作業環境測定の結果が適切になるように設備が管理されているか、個人用保護具が適切に使用・管理されているか等をチェックします。検査結果の保存特殊健康診断の検査結果の保存期間は、労働安全衛生法に基づき5年間の保存が義務付けられています。ただし、有害物質に関する特定の検査結果については30~40年の保存が必要な場合もあります。健康診断結果は雇用中の従業員だけでなく、退職者についても同様に保存する必要があります。特殊健康診断を実施しないと罰金の可能性も企業が特殊健康診断の対象者に対して健康診断の実施を怠った場合、労働安全衛生法違反となってしまい、労働基準監督署から指導が入ることがあります。指導を受けても改善されない場合は50万円以下の罰金が科せられる場合があるため、注意しましょう。特殊健康診断には多くの分類がありますが、企業は健康診断が必要な従業員をリスト化するなどして適切に管理する必要があります。特殊健康診断の管理や、従業員の健康管理を適切に行うために、健康管理システムの導入をおすすめします。「健診業務の負担を減らすには?DXツールの成功事例」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します健康管理システムで効率的に従業員の健康管理をしよう企業は特殊健康診断のほかに一般健康診断やストレスチェックなど従業員全員の健康管理をする必要があります。しかし、従業員の数が多ければ多いほど管理が難しくなります。そこで、健康管理システム「ハピネスパートナーズ」の導入をおすすめします。健康管理システム「ハピネスパートナーズ」とは?「ハピネスパートナーズ」は、従業員の健康情報が適切に管理できるクラウドシステムです。全従業員の健康診断やストレスチェックなどのデータをクラウド上でまとめて管理するため、作業の効率化を図ることができます。健康管理システム「ハピネスパートナーズ」資料をダウンロードする健康診断情報を一括管理「ハピネスパートナーズ」では、従業員の業務内容や職歴、特殊健康診断対象者かどうかなどを表で分かりやすく管理できます。また健康診断の頻度や受診の有無、検査結果などもこのシステムを利用すれば、漏れなく把握することができます。従業員全員分の個人カルテを作成健康診断結果やストレスチェック、保健指導の面談記録等を入力するだけで自動的に分かりやすい表で確認できます。健康状態や面談内容が分かりやすいと、健康リスクを事前に防ぐ効果が期待できるのです。紙から電子データへの移行も対応これまでに紙で管理していた健康診断結果などの健康情報も管理できます。電子データへの移行はスタッフがサポートいたします。システム上でも過去にさかのぼって従業員の健康状態を確認できるのです。なお、移行期間は最短で3週間ほどとなります。閲覧権限設定でプライバシーも守りますシステム上で一括管理できるため、健康情報が誰にでも見られてしまうのではないかと不安に感じる人もいるかもしれません。しかし、個人の健康記録は閲覧範囲や閲覧権限を細かく設定することが可能です。必要な人にのみ健康情報が確認できるようになっているため、安心してお使いいただけます。クラウドサービスのため導入コストが削減できるハピネスパートナーズは、クラウドを活用したシステムサービスです。物理的なサーバーやハードウェアの購入が不要なため、導入コストを大幅に削減できます。また利用開始まで設定もスムーズに行えます。【まとめ】特殊健康診断は必須!従業員の健康管理を徹底しよう特殊健康診断は労働安全衛生法やじん肺法によって定められており、特定の有害な業務に携わる従業員に対して実施する義務がある健康診断です。特殊健康診断後は結果に応じて、従業員に対するフォローや業務内容の改善をする必要があります。また対象の従業員が在籍しているにも関わらず、実施を怠ると罰金が科せられる場合があるので注意しましょう。一般的な健康診断と異なり、複数の分類や特殊な検査項目があるため、健康診断に漏れが無いよう企業は適切な管理を行わなければいけません。そのような場合には、健康管理システム「ハピネスパートナーズ」の導入をおすすめします。従業員の健康管理を総合的に行えますので、お困りの際はぜひ「ハピネスパートナーズ」をご利用ください。「健診業務の負担を減らすには?DXツールの成功事例」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します