「心理的安全性」という言葉の正しい理解の必要性多くの企業が、組織風土の改善として、1on1面談の導入、ハラスメント研修の実施、エンゲージメントサーベイの活用などに取り組んでいます。しかしその一方で、次のような課題は依然として多くの職場で見られます。会議で意見が出ず、議論が形骸化する重大な問題が起こる前段階で誰も声を上げられず、トラブルが顕在化してから対応することになる小さなミスが共有されず、同様の問題が繰り返される職場のコミュニケーションが減り、新人育成が進まないハラスメント相談が表に出てこない従業員の早期離職が続くトラブル対応が集中し、管理職が孤立したり、負担が増大するこうした状況の中で、心理的安全性の欠如が原因と指摘されるケースも珍しくありません。近年、「心理的安全性」は人材管理の領域における重要概念として、広く知られるようになりました。一方で、心理的安全性はしばしば「自由に発言できる雰囲気づくり」や「人間関係の良好さ」と同義に扱われています。この理解のまま施策を進めると、ぬるま湯のような組織形成に向かい、かえって組織の機能不全を招くことがあります。本記事では、職場における心理的安全性を「雰囲気」ではなく「組織のありかた」として捉え直し、実務に活かせる形で分かりやすく解説します。「ワーク・エンゲイジメント いきいきした職場づくりの方策」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します関連記事:企業における心理的安全性とは?高める方法と事例を解説 成果を出すチームには「心理的安全性」が共通する「心理的安全性」という言葉は、Google社の「プロジェクト・アリストテレス」という調査により広く知れ渡るようになりました。この調査は、Google社が「安定して結果を出す優秀なチーム」がどのようなものか調べるために、真に優秀なチームの特徴を調査したことから始まりました。当時のGoogle社では、従業員のチームごとに成果にばらつきがあることが会社全体の課題でした。調査を進めるごとに、優秀な人材、つまり、IQや学歴に秀で、外交的で経験年数も長いような優秀な人員だけを集めたチームが必ずしも「成果の高いチーム」とはならないということが分かってきました。ここで、改めて成果の高いチームの特徴に目を向けると、成果の高いチームでは「心理的安全性(psychological safety)」が高いということが分かったのです。心理的安全性は、簡単にいうと「このチームで、無知・ミス・意見を出しても、否定・嘲笑・処罰されないと感じられる状態」です。心理的安全性が高い組織では、情報の非対称性が解消され、個々の能力が最大限に発揮されやすくなるため、チーム全体のパフォーマンスが向上する傾向にあります。また、Googleは、成果の高いチームの会話パターンも分析しました。成果の高いチームでは、チームの全員に発言権があり、その結果、発言量が均等となるという結果でした。また、成果の高いチームでは、雑談や、体調の共有、家庭の話、今しんどいことなどの、個人的な感情や調子が普段から話題に上がっていました。つまり、仕事の話だけする、一見プロ意識が高そうな環境ほど、成果が出にくいことが分かったのです。成功するチームの決定打は、メンバーの顔ぶれではなく「相互の関わり方」にあります。参考:Google re:Work「『効果的なチームとは何か』を知る」https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/心理的安全性の高い職場は「ただ優しい」わけではない心理的安全性の高い職場を育てる方法の前に、心理的安全性の高い職場と誤解され、混同しやすい、「ぬるま湯職場」についてご紹介します。「ぬるま湯職場」は、人間関係への配慮が優先され、居心地は悪くないが必要な指摘や改善が伝えられなくなっている職場のことを指します。ぬるま湯職場では、関係を壊さないことを優先して、発言が許容されます。上司は部下に優しくさせ、雑談を推奨し、1on1を増やすことで、このぬるま湯職場が出来上がってしまう危険性があります。心理的安全性施策が失敗する典型は、「発言しやすさ」だけを高めて「指摘できる関係」を築けない場合です。心理的安全性の本質は、安心して話せることではなく、「安心して仕事の指摘ができる」ことなのです。心理的安全性の高い職場の築き方:人事・組織でできる対策では、どのように対策すれば正しく心理的安全性が高い職場を作れるのでしょうか。制度を作る側である人事・組織での対策、現場を回す直属の上司における対策に分けてご説明します。心理的安全性の高い職場には、人事・組織での対策が不可欠です。現場の管理職個人の努力に依存するだけでなく、人事・組織がバックアップする仕組みが整ってこそ、施策は真の効果を発揮します。①ミスや失敗の報告を「貢献」と評価する人事・組織がまずすべきことは、「発言した人が損をしない仕組み」を作ることです。心理的安全性は文化ではなく、評価制度の問題です。多くの職場では、ミスを報告するとミスをした人として非難されます。しかし、ここでミスをした人を責めると、従業員はミスを隠蔽するようになります。小さなミスや失敗の報告について、評価ルールを変えていくことが必要です。ミス報告数を「改善の種」として評価。報告が増えた部署を称賛する仕組みで組織の空気を変えましょう。もちろん、ただ報告させるだけで終わらせず、集まった小さなミスを分析し、再発防止提案を練りましょう。②綿密なハラスメント対応次にすべきことは、ハラスメント対応です。心理的安全性を壊す最大要因は、ハラスメントを受けて相談したとして、状況が変わらない経験といえます。このため、ハラスメントの報告があった際にはしっかりと対応することが大切です。相談から72時間以内に一次対応を行うなど、迅速な対応プロセスをあらかじめ規定し、周知しておくことが有効です。対応の遅れは被害の拡大や組織への不信感に直結するため、スピード感を持った体制構築が求められます。また、被害者と加害者の接触回避を組織が保証することも有効です。さらに、上司を飛び越えた相談ルートの確保も重要です。社内だけで解決しようとせず、外部EAPによる「上司を通さない相談ルート」を確保してください。専門家による介入が、事態の深刻化を防ぎ、離職率低減に直結します。ハラスメントの対応の厳格化は、離職率を下げるために非常に有効な手立てです。③管理職教育の内容を変える3つ目は、上司にあたる従業員に、部下が失敗したとき必要以上に厳しく叱らないように指導することです。頭ごなしにミスを責めると、ミスの報告が減ります。このため、問題が起こっていてもかなり大事になるまで表面化しない、心理的安全性の低い職場に近づいていきます。人格まで変えることは無理でも、部下の失敗に対する適正な姿勢を指導することは、職場の心理的安全性を高めることに繋がります。④会議のあり方を変える4つ目は、会議においていくつかのルールを決めることです。例えば、発言の順番を変えて役職の低い人から話し、上司は最後に発言するようにすれば、発言の回数は均等に近づきます。また、反対意見役(デビルズアドボケイト)を公式役割にすると、反対する人が空気を乱す人にならず、「意見や指摘を適正に言い合える職場」に近づきます。⑤職場アンケートの評価方法を変える従業員が職場をどのように評価しているかアンケートをとる際に、満足度だけではなく適切な指摘ができる職場かを確認し評価します。「この職場では間違いを指摘できますか?」「上司に異論を言えますか?」「困った時に助けを求められますか?」これが心理的安全性の指標です。「経営視点から紐解く アブセンティーイズムとプレゼンティーイズム」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します心理的安全性の高い職場の築き方:直属の上司ができる対策上司の対策は、最も効果が大きい取り組みといえます。順に説明します。①前提条件をシェアする部下が配属された際に、いくつかの条件をシェアすることが重要です。必ず伝える内容としては、次の通りです。はじめは分からない方が普通なので、分からないときは素直に伝えてほしいこと質問しない方が問題で、どんどん質問してほしいことミスは隠すと困るが、報告は歓迎すること許可を与えないと人は発言しません。このため、部下ひとりひとりにも会社をよりよくするための指摘をする権利があるという認識をしっかりとシェアします。②ミス報告を受けた時の反応を固定化する部下からミスや失敗の報告を受けた際には、最初に原因追及をしないように徹底します。「教えてくれてありがとう」「原因は一緒に整理しよう」などの一言から対応することで、部下の失敗報告を促します。原因追及を最初にすると、報告ができない職場になってしまうリスクがあります。③上司が弱さを先に出す人は「安全そうな人」にしか本音を言いません。権威を下げると、発言が増えます。「この仕事、私も最初よく間違えた」「このシステム分かりにくいよね」「私も判断に迷っているから、意見がほしい」このように、共感を示す言葉や、権威を下げる言葉が効果的です。④定期1on1を「評価面談」にしない面談が業績確認になってしまうと、せっかくの定期1on1面談の効果が半減します。1on1面談では、業務の話をしなくても構いません。最近困ってることを聞いたり、仕事で不安なことを尋ねる。また、変えてほしいことがあるかどうかを確認するなど、上司へのフィードバックを許可する行為が心理的安全性を作ります。⑤会議で沈黙者に仕事を与える会議でオープンに「誰か意見がありますか」と尋ねるのではなく、名指しで「この件についてどう思いますか?」と質問し、発現機会を意図的に配ることで心理的安全性が高まります。この際、責めるトーンではなく「知りたい」という態度で尋ねることがポイントです。「ワーク・エンゲイジメント いきいきした職場づくりの方策」資料をダウンロードする※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移しますハラスメント対策・職場改善にはエムスリーヘルスデザインのEAPハラスメント対策の外部資源をはじめ、職場の環境改善の一手としておすすめなのが、エムスリーヘルスデザインの外部EAPサービスです。エムスリーヘルスデザインでは、ストレスチェック委託と併用できるEAPサービスを提供できます。エムスリーヘルスデザインのEAPサービスでは、メンタル不調の予防と早期対応に特に力を入れています。まず、人事・管理職の方々には、専任の心理士が企業や組織の環境改善について具体的な提言を行います。さらに、メンタル面に課題を感じながら働く従業員に対し、専門家とのカウンセリングを通じて心の健康維持や早期の適切な対応をサポートします。また、ストレスチェック後の集団分析結果や現場の課題を踏まえた研修プログラムも提供。ラインケアに特化した内容はもちろん、セルフケアまで幅広くカバーします。企業・官公庁での豊富な研修実績を持つスタッフが、最適な内容で健康経営を力強く支援します。エムスリーヘルスデザインのEAPは、単なる従業員向けの相談窓口にとどまりません。組織分析に基づき、人事・管理職に対して具体的な「職場改善の提言」を行うパートナーとして機能します。心理的安全性という抽象的な課題を、実効性のある施策へと落とし込みます。提供サービスの概要専門家による相談対応:公認心理師など資格を持つカウンセラーが、従業員の相談に応じ、安心できる支援を行います。人事・産業医との協働:個人対応にとどまらず、職場環境の改善へとつなげる仕組みを構築。ストレスチェックとの連動:制度導入後の高ストレス者面談や職場改善まで一貫してサポートします。充実したサポート体制メンタルヘルス以外の問題も回数無制限で相談可能専門家(国際EAPコンサルタント・臨床心理士・公認心理師など)が直接対応必要に応じて適切な専門機関へ紹介大阪・京都エリアでは訪問対応も可能職場復帰支援も万全事業場内のご担当者やご家族、主治医と連携し、円滑な職場復帰をサポートします。本人へのカウンセリング復職に向けた受け入れ態勢整備への助言・提案本人・上司・人事などを交えた復職前面談従業員の健康を守ることは、組織の成長を支える最も確かな投資です。エムスリーヘルスデザインのEAPとともに、健康経営への第一歩を踏み出してみませんか。心理的安全性を高める第一歩は、現状の可視化です。健康管理システム「ハピネスパートナーズ」なら、ストレスチェック結果や面談記録、さらには勤怠データを一元管理し、「どの部署で、どのようなリスクが兆候として現れているか」を多角的に分析可能です。現場の「空気感」をデータという根拠に変えることで、納得感のある組織改善が可能になります。ハピネスパートナーズは、点在するデータを一元管理し、事務工数を最大87%削減します。組織改善に充てる時間を生み出すために、まずは煩雑な健康管理業務のDX化が不可欠です。煩雑な事務作業から解放され、従業員への手厚いケアに時間を割ける環境を構築しませんか?効率的かつ実効性のあるメンタルヘルス対策を、今すぐ始めてみませんか。エムスリーヘルスデザインの「EAPサービス」資料をダウンロードする集団分析まで行える「職場のストレスチェック+plus」で従業員が離職しない土壌を育む年1回のストレスチェックにおいて、高ストレス者への対応と、結果分析による職場のストレスの程度の把握を行うことで、大きなストレスがかかっている従業員や部署を把握し、職場環境の改善や早期のケアにつなげることで、メンタルヘルス不調による休職や離職を未然に防ぐ、組織の土壌づくりをサポートします。また、厚生労働省の検討会において、50人未満の事業場についてもストレスチェック実施が義務化する方針が報告書に盛り込まれました。今後数年以内での法改正と施行が見込まれており、早期の体制整備が推奨されます。今後数年以内での法改正が見込まれており、早期の準備が推奨されます。ストレスチェック事業を開始して30年以上、年間1,400社、約35万人の導入実績を誇るエムスリーヘルスデザインは、ストレスチェックの委託サービスを提供しております。職場のストレスチェック+plusでは、単に検査を行うだけではありません。その結果を活かしてメンタルヘルス不調による休職をできるだけ防ぐために、臨床心理士などの専門家による実践的なアフターフォローを提供しています。結果を活かし、組織課題の把握や環境改善を通じて、働きやすい職場環境の構築を支援します。主な支援内容は次の3つです。アナリストレポート経験豊富な心理職スタッフが、ストレスチェックの集計結果を分析し、課題に応じた改善プランを提案します。また、安全衛生委員会などでのオンライン報告会にも対応しており、現場での共有・議論をスムーズに進めることができます。オンラインセミナー企業や官公庁での研修実績を持つ講師陣が、ヘルスリテラシー向上を目的とした教育プログラムを実施します。内容は職場の課題に合わせてカスタマイズが可能で、たとえば次のようなテーマが人気です。職場メンタルヘルスと管理職の役割ストレスマネジメントの基本と実践方法EAPサービス(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)心理・医療・産業分野の専門家チームが、従業員と組織の両面から健康を支える仕組みづくりを包括的にサポートします。相談体制の整備や教育、意識啓発まで、継続的に支援を行います。ストレスチェックは「実施すること」が目的ではありません。結果をどう活かすかこそが、従業員の健康を守り、働きやすい職場をつくるための鍵です。「職場のストレスチェック+plus」なら、検査から職場改善、教育までを一括で支援。法改正への対応準備や、従業員のメンタルヘルス対策にお悩みの方は、累計導入実績豊富なエムスリーヘルスデザインへご相談ください。貴社の規模や課題に合わせた最適なプランを無料でご提案いたします。ストレスチェックサービス「職場のストレスチェック+plus」資料をダウンロードする