離職防止とは
離職防止とは、職員の離職を防ぐための取り組みのことです。英語ではリテンション(Retention)、またはリテンションマネジメントとも呼ばれます。
厚生労働省の雇用動向調査によると、2024年の離職率は14.2%。これは年初の常用労働者数に対する割合を示すもので、2015年以降、日本の離職率は平均15%前後で推移しています。
注目すべきは、離職の理由の内訳です。結婚、出産・育児、介護・看護といった個人的な事情による離職は約10%前後にとどまります。
裏を返せば、残りの約90%は、職場環境や働き方など、企業側の取り組みによって改善できる可能性があるということです。
では、職員の離職にはどのようなリスクがあり、離職を防ぐために事業所が講じることのできる対策にはどのようなものがあるのでしょうか。
次の章で詳しく見ていきましょう。
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参考:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/
人材の離職がもたらす多面的なリスク
社員の退職は単なる人手不足にとどまらず、経済的損失から組織文化への悪影響、さらには顧客や社会からの評価にまで波及します。企業にとって無視できないリスクを、4つの観点から整理してみましょう。
経済的リスク
離職は直接的・間接的に大きなコストを生みます。まず、新しい人材を採用するためには、求人広告費や人材紹介料、採用担当者の工数といった追加コストが発生します。さらに、これまで投資してきた教育研修費や職場内訓練の時間は失われてしまい、即戦力を喪失することで業務の生産性も一時的に低下します。特に専門職や経験豊富な人材が退職した場合、その穴を埋めるまでに相当な時間がかかります。
業務上のリスク
退職は日々の業務にも直結するリスクを伴います。ノウハウや顧客情報が属人的に管理されていた場合、それらが一気に失われる恐れがあります。また、担当者が急に抜けることでプロジェクトが遅延し、納期や品質に影響することも少なくありません。さらに残された従業員の負担が増し、過重労働やモチベーション低下を引き起こす可能性があります。
組織文化・人材面のリスク
人材の離職は組織の雰囲気や、従業員が仕事や組織に対してどれだけ心理的に結びつき、主体的に関わろうとしているかの度合い(エンゲージメント)にも影響を及ぼします。優秀な社員が辞めると「自分も辞めた方がいいのでは」と考える従業員が増え、士気の低下を招きます。離職が続くと一体感や信頼関係が損なわれ、組織文化そのものが崩壊しかねません。特にリーダーやキーパーソンの退職は、その部下や後輩の連鎖的な流出を引き起こす大きなリスクです。
外部へのリスク
退職は社内にとどまらず、外部との関係にも影響を及ぼします。顧客対応を担っていた社員が辞めれば、取引先との信頼関係が弱まり、顧客満足度や契約継続率が低下する恐れがあります。また、人がすぐ辞める会社という悪評が広まれば、採用力にもマイナスです。さらに、不満を抱えたまま退職した社員が労務トラブルや訴訟を起こすケースもあり、コンプライアンス上のリスクも無視できません。
つまり、人材の離職はお金の問題だけではなく、業務の停滞・組織文化の悪化・顧客や社会からの信頼低下へと広がるような、企業存続に直結するリスクです。だからこそ、離職防止やエンゲージメント向上の取り組みは、経営戦略の中核と位置づける必要があります。
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離職しそうな職員にみられる特徴
社員が離職を意識し始めると、その兆候は行動や感情、キャリア志向、そして日常の実務の中に現れてきます。早期に気づき、適切に対応することが離職防止につながります。
職員が離職を考えているかどうか、それぞれのチェックリストも参考にされてください。
行動面の変化
まず目立つのは勤怠や業務態度の変化です。遅刻・欠勤・早退が増えたり、体調不良や家庭の事情を理由に休みがちになることがあります。会議や業務に対して消極的になり、発言や提案が減少するのも特徴です。また、新しいプロジェクトや当番業務を避ける、残業や休日出勤を嫌がるなど、責任を負うことや労力をかけることを避ける傾向も見られます。
【行動面での退職徴候】
遅刻・欠勤・早退が以前より増えている
会議や業務での発言が減り、消極的になっている
新しい仕事や責任ある業務を避けるようになった
定時退社が急に増えた、残業や休日対応を嫌がる
私物を片付け始めている(ロッカー・デスク周り)
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心理・感情面の変化
心理的な側面では、不満を口にする回数が増え、給与・待遇・人間関係・労働時間への不平を表すようになります。同僚との雑談や交流を避け、孤立や疎外感を示すこともあります。将来について尋ねられても「ずっとは続けないと思います」「次を考えてます」といった曖昧な返答が増え、笑顔や表情も少なくなり、義務感だけで業務に臨んでいる様子がうかがえます。
【心理・感情面での退職徴候】
給与・人間関係・労働環境などへの不満をよく口にする
職場での雑談や飲み会など交流を避けるようになった
表情が乏しくなり、笑顔が減っている
「将来的にここで働き続けるかは分からない」などの曖昧な発言がある
上司や同僚とのコミュニケーションを避けがち
キャリア志向の変化
転職準備を反映した行動もサインのひとつです。スキルアップや資格取得への熱意が高まり、自己投資が増えている場合には、次のステップを意識している可能性があります。他業界や他病院に関する情報収集を行ったり、研修会で人脈づくりに積極的になったりするのも特徴です。また、上司にキャリア相談を持ちかけつつも、返答に納得しない様子が見られることもあります。
【キャリア・スキル面での退職徴候】
転職に直結しそうな資格取得や研修への関心が急に高まった
他社・他病院・他業界の情報収集をしている様子がある
「今後のキャリア」に関する相談が増えたが、会社の回答に納得していない
仕事に身が入らず、キャリアへの期待感が低下している
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実務上のサイン
さらに、実務の中にも退職の予兆が現れます。不自然に引き継ぎ資料やマニュアルを整備し始めたり、デスクやロッカーの私物を徐々に片付けたりする行動です。有給休暇を計画的に消化し、特に連休を取得している場合は、面接や転職活動に充てているケースも考えられます。
【業務面での退職徴候】
業務引き継ぎ資料を急に整備し始めた
有給休暇の消化が目立ち、特に連休取得が多い
生産性や仕事の質が以前より低下している
周囲から「最近やる気がない」「辞めるのでは」との声が出ている
これらのサインを早めに察知し、従業員と向き合うことが、離職防止やエンゲージメント向上の第一歩です。
よくある離職の原因
社員が会社を去る理由は一つに限らず、複数の原因が重なり合うことが多いものです。離職の背景を理解するためには、環境、人間関係、評価・待遇、キャリア・成長、そしてライフイベントという5つの軸で考えると整理しやすくなります。
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働く環境に関する原因
長時間労働や過重労働が続けば、心身の疲労が蓄積し、仕事へのモチベーションが大きく低下します。また、有給休暇が取りにくい、育児や介護との両立が難しいといった制度面の不備も、働き続けるハードルとなります。さらに、人員不足や設備・システムの遅れといった業務環境の不備が働きにくさとして従業員にストレスを与えます。
人間関係に関する原因
上司との関係悪化やハラスメント、適切なフィードバック不足は、信頼関係を壊し、離職の直接的なきっかけとなります。同僚間の摩擦や派閥意識もチームワークを損なう原因です。また、心理的安全性が欠如し、「意見を言いにくい」「失敗が許されない」と感じる職場では、従業員のエンゲージメントが低下していきます。
評価・待遇に関する原因
報酬や昇給が努力や成果に見合わない場合、従業員は不満を抱きやすくなります。人事評価が不透明で公平性に欠けると感じれば、信頼を失い、転職を考える契機となります。加えて、住宅手当や育児支援、健康サポートといった福利厚生が十分でないことも、従業員が働き続ける動機を弱める原因になります。
キャリア・成長に関する原因
将来的なキャリアパスが見えない、教育や研修の機会が乏しく成長実感が得られない、挑戦の場がなくルーティン業務ばかり、などなど。こうした状況は「この会社にいても成長できない」という感覚を生み、転職への意欲を高めます。
個人のライフイベントに関する原因
転居、結婚、出産、介護といったライフイベントも離職の大きな原因です。また、メンタル不調や身体的な健康問題によっても、働き続けることが難しくなるケースがあります。
以上のように、社員の離職は会社に起因する要素と個人のライフイベントが複雑に絡み合って起こります。企業が離職防止を考える際には、この5つの観点からバランスよく課題を捉え、環境整備や制度改善、キャリア支援を進めていくことが重要です。
離職防止の具体策
社員の離職を防ぎ、長期的に働き続けられる職場をつくるには、複数の側面からアプローチする必要があります。離職防止には万能な一手はありません。
働きやすさ(環境・制度)
人間関係(心理的安全性)
キャリア(成長・将来の見通し)
待遇(報酬・評価の納得感)
の4つに、離職しそうな職員への早期対応をプラスした5つの柱を軸に取り組みを進めることで、従業員のエンゲージメントを高め、定着率の改善につながります。
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職場環境の改善
まず欠かせないのは働きやすい環境の整備です。残業の削減やシフト調整、業務の属人化解消などを通じて労働時間を適正化します。さらに、フレックスタイムやリモート勤務、時短勤務といった柔軟な働き方を導入することで、多様なライフスタイルに対応できます。また、EAP(従業員支援プログラム)や産業医面談、ストレスチェック後のフォローなど、健康・メンタル支援の仕組みを整えることも重要です。
【職場環境の改善に関する離職防止施策】
労働時間の適正化:
残業の削減
シフト調整
業務の属人化解消
柔軟な働き方の導入:
フレックスタイム
リモート勤務
時短勤務
健康・メンタル支援:
EAP(従業員支援プログラム)
産業医面談
ストレスチェック後のフォロー
人間関係・組織文化の強化
働く人同士の関係性や組織文化も離職に直結します。定期的な1on1ミーティングを通じて、上司が部下の悩みやキャリアに耳を傾ける機会を設けることが効果的です。さらに、ハラスメント防止研修や相談窓口の整備により、安心して働ける環境を保証します。加えて、社内イベントや交流会を通じたチームビルディング活動は、心理的安全性を高め、エンゲージメントの向上につながります。
【人間関係・組織文化の強化に関する離職防止施策】
1on1ミーティングの実施:上司が定期的に部下の悩みやキャリアを聞く場を設けます。
ハラスメント防止研修と相談窓口整備:安心して働ける環境を保証します。
チームビルディング活動:社内イベントや交流会で心理的安全性を高めます。
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キャリア・成長支援
社員が「ここで成長できる」と実感できる仕組みも欠かせません。昇進や異動の基準を明確化し、将来のキャリアパスを描けるようにします。さらに、研修や資格取得支援、学習費用の補助などを通じてスキルアップを支援します。新規プロジェクトや役職登用といった挑戦の機会を提供することで、成長実感を高め、モチベーション維持につながります。
【キャリア・成長支援に関する離職防止施策】
キャリアパスの明確化:昇進や異動の基準を明文化し、将来像を描けるようにします。
スキルアップ支援:研修・資格取得支援、学習費用補助など。
挑戦の機会提供:新規プロジェクトや役職登用など、成長実感を得られる場を作ります。
評価・待遇の改善
社員の努力を正しく認める評価制度も重要です。成果だけでなくプロセスや努力も評価する「公正で透明な制度」を整え、定期的な昇給や市場水準との比較に基づいた報酬の適正化を進めます。さらに、住宅手当や子育て支援、健康増進プログラムなど福利厚生を充実させることで、従業員の安心感と会社への信頼が強まります。
【評価・待遇の改善に関する離職防止施策】
公正で透明な評価制度:成果だけでなくプロセスや努力も評価するよう努めます。
報酬の適正化:市場水準との比較・定期的な昇給制度を導入します。
福利厚生の充実:
住宅手当
子育て支援
健康増進プログラムなど
早期兆候への対応
最後に、退職の兆候を見逃さない仕組みも必要です。離職兆候チェックリストを活用し、態度や勤務状況の変化を定期的に確認します。不満や悩みが見つかった場合は、スピード感をもって対応し、解決につなげることが大切です。また、定期的なエンゲージメント調査や従業員満足度調査を実施し、その結果を改善策に反映することで、離職防止の取り組みを継続的に強化できます。
【早期兆候への対応に関する離職防止施策】
離職兆候チェックリストの運用:態度や勤務状況の変化を定期確認を行います。
早期介入:不満や悩みを聞き取り、改善できるものはスピード感をもって対応します。
エンゲージメント調査:定期的な従業員満足度調査を実施し、改善に活用します。
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全国対応が可能で、導入から効果検証、改善施策の提案までを一貫してサポート。従業員一人ひとりと組織全体を同時に支える体制を整えています。
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提供サービス
専門家によるカウンセリング:
公認心理師などの有資格者が従業員の不安や悩みに応じます。匿名性を確保し、安心して相談できる環境を保証。
人事部門・産業医との協働:
個々のケース対応にとどまらず、組織課題の改善を視野に入れた連携を実施。
ストレスチェックとの統合:
法定の、年1回のストレスチェックから高ストレス者面談、さらに職場改善まで一括で支援します。
導入による効果
離職率の低下:早期対応によりメンタル不調を未然に防ぎ、人材の定着を促進。
業務効率の改善:健康を守ることで従業員のパフォーマンスを最大化。
リスクマネジメント:労働安全衛生法への対応はもちろん、訴訟リスクの低減にも寄与。
企業価値の向上:「健康経営優良法人」認定の取得を強力に後押しします。
従業員の心身の健康を守ることは、企業の持続的成長につながります。
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