派遣社員のストレスチェック、義務は派遣元?派遣先?解説 読み込まれました

ストレスチェック

公開日:

2025/11/01

更新日:

2025/11/14

派遣社員のストレスチェック、義務は派遣元?派遣先?解説

吉田瞳(保健師、看護師、第一種衛生管理者)

派遣社員のストレスチェック、義務は派遣元?派遣先?解説

派遣社員のストレスチェックは誰が行う?派遣元・派遣先の法的義務と制度のポイント

ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルスを守るために2015年から義務化されました。

しかし、派遣社員の場合「ストレスチェックを実施するのは派遣元か、派遣先か?」と迷う企業も少なくありません。

本記事では、派遣社員に対するストレスチェック制度の仕組みを整理し、派遣元・派遣先それぞれの法的義務や実務上のポイント、集団分析の扱い方までを詳しく解説します。

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ストレスチェック制度の基本概要

ストレスチェック制度は、働く人が自分のストレス状態を把握し、職場環境を改善するきっかけをつくることを目的としています。

年1回の実施が義務付けられており、労働者50人以上の事業場が対象です。

主に厚生労働省が推奨している選択式の質問票に答える形式で実施します。

結果は本人に通知され、希望すれば医師の面接指導を受けることができます。

会社(事業者)は、個人結果をもとに従業員のメンタル不調を防ぐだけでなく、集団分析による職場環境の改善にも活用します。

ストレスチェック制度の目的と仕組み

ストレスチェック制度の目的は、メンタルヘルス不調を早期に察知し、深刻化を防ぐことです。ストレスが高まる前に自身で気づき、対策をとることで、うつ病などの精神疾患の発症を予防します。

ストレスチェック制度の流れは次の3段階です。

  1. ストレスへの気づき(個人レベル)
     従業員が質問票に回答し、自分のストレス状態を把握する。

  2. 医師の面接指導(必要な者への対応)
     高ストレスと判断された労働者が希望すれば、医師の面接指導を受けられる。

  3. 職場環境の改善(組織レベル)
     事業場ごとに集団分析を行い、ストレス要因を把握して職場環境を見直す。

ストレスチェックの実施によって、従業員は自身の状態に気づき、企業は働きやすい環境づくりに役立てることができます。

派遣社員もストレスチェックの対象になる理由

ストレスチェックの対象者は「常時使用する労働者」と定義されているため、正社員だけでなく、一定の条件を満たした派遣社員や契約社員も含まれます。

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派遣社員のストレスチェックは誰が実施する?派遣元と派遣先の役割を整理

派遣社員のストレスチェックでは、「誰が実施するのか」という点がしばしば混乱を招きます。労働安全衛生法上の考え方は明確であり、雇用契約を結んでいる事業者(=派遣元)が、派遣社員に対してストレスチェックを実施する責任を負います。

一方で、派遣社員が実際に勤務する派遣先に対しても、職場環境の改善や面接指導への協力など、一定の役割が求められます。
ここでは、派遣元・派遣先それぞれの義務と留意点、そして両者の連携体制の重要性について整理します。

引用:厚生労働省 「派遣労働者に対するストレスチェック等の実施に関する考え方」(2025/10/27)

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派遣元の法的義務と実施範囲

派遣社員のストレスチェックを実施するのは、派遣元事業者の義務です。
派遣社員は派遣元と雇用契約を結んでいるため、労働安全衛生法で定める「労働者を使用する事業者」にあたるのが派遣元になります。

派遣元が行うべき対応は以下の通りです。

  • 実施義務の履行:常時50人以上の労働者を使用している場合、派遣社員も含めてストレスチェックを実施する。

  • 実施医師の選任・通知・面接指導:高ストレス者への面接指導の手配や、結果通知など、制度に基づく対応を行う。

  • 結果管理と個人情報保護:ストレスチェックの結果は、個人情報として厳重に管理し、本人の同意なしに派遣先へ提供しない。

  • 複数派遣先勤務の把握:勤務日数や労働時間を確認し、どの職場を主な就業先としてチェックするかを適切に判断する。(複数の派遣先に勤務している派遣社員の場合)

派遣先の協力義務と留意点

派遣先は、ストレスチェックの実施義務はありませんが、職場環境改善に関する協力義務があります。派遣社員の勤務状況や業務内容を把握している立場として、派遣元から要請があった際に適切に対応することが求められます。

  • 必要な情報提供:勤務内容や配置、勤務時間など、ストレスチェックに必要な範囲で情報を共有。

  • 面接指導や改善要請への協力:高ストレス者への面接指導後の職場改善の依頼に応じ、派遣元と連携。

  • メンタルヘルス意識の浸透:職場改善施策や安全衛生教育を通じ、派遣社員を含む従業員全体のメンタルヘルス対策に協力。

派遣先は個人情報を直接取得せず、派遣元の指示・同意に基づく範囲で協力する必要があります。

派遣元・派遣先の連携体制を整える重要性

ストレスチェック制度を円滑に運用するためには、派遣元と派遣先の連携が不可欠です。派遣元は個人結果を管理し、派遣先は職場改善を担当するという役割分担を明確にし、情報の共有方法や範囲を事前に決めておくことが重要です。これにより、後から起こりうるトラブルを未然に防ぎ、制度の趣旨を最大限に活かすことができます。

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派遣先が担う集団分析|職場単位での環境改善を進めるポイント

ストレスチェック制度では、個々の結果を本人へ通知するだけでなく、部署や性別、年齢などのカテゴリごとに分けて集計・分析する「集団分析」を通じて、組織全体のストレス傾向を把握し、職場の環境を改善する取り組みが推奨されています。その集団分析を担うのは、実際の職場を管理する派遣先企業です。ここでは、派遣先が担う集団分析の制度上の位置づけと注意点、そして結果をどのように職場改善に結びつけるかについて解説します。

集団分析は派遣先の役割|制度上の位置づけ

集団分析とは、個人結果を部署や職場単位で集計し、メンタルヘルスの状況を全体的に把握するための分析です。労働安全衛生法上では努力義務ですが、職場環境の改善における有効な手段として多くの企業で活用されています。

集団分析の目的は、職場におけるストレスの傾向を「見える化」し、組織的な課題を早期に把握することです。たとえば、特定の部署でストレス反応が高い場合、その背景に業務量の偏りやコミュニケーション不足などの要因があることが見えてきます。

派遣社員が就業する場合、この職場単位での集団分析の主体は派遣先企業が担うのが基本です。派遣先は日々の業務環境を管理する立場にあるため、分析結果をもとに勤務体制や人間関係の改善策を検討し、働きやすい職場づくりを推進することが求められます。

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派遣社員を含めた集団分析の注意点

派遣元から情報提供を受ける場合は、本人の同意取得と個人情報保護のルールを厳守する

ストレスチェックの個人結果は派遣元が管理しており、派遣先が個人データを直接確認することはできない。情報共有の際は、法令に基づく取り扱いが求められる。

適正な分析につながるよう人数に留意

集団分析は個人が特定されることを防ぐため、10人以上の集団で分析するのが望ましい。分析の対象者が少人数の部署では統計上のばらつきが大きくなるという弊害もあるため、分析対象の範囲を工夫することが大切。

従業員の満足度向上を促す職場改善につなげる

派遣社員を含む全従業員が「自分たちの意見が反映されている」と感じられるよう、改善施策の説明やフィードバックを行うことが望ましい。

派遣元・派遣先の間での「情報の取り扱い方法」や「共有ルール」に関する事前の合意が重要

共有するのは統計化・匿名化された集団分析の結果に限定し、個人が特定される情報は含めない。データの提供方法やアクセス権限、共有のタイミングや頻度も事前に合意しておくことで、情報の漏洩や誤用を防ぐことができる。

これらの注意点を踏まえることで、派遣社員を含めた公正かつ安全な集団分析を実現し、信頼性の高い職場環境の改善につながります。

分析結果の活用と職場環境改善の実践

  • 職場改善策の検討:派遣社員を含めた結果をもとに、業務量調整や同僚や上司とのコミュニケーションの改善などを実施。

  • 派遣元との連携:面接指導や健康相談を行う派遣元と職場改善を担う派遣先の取り組みを連動。

集団分析を単なる作業に終わらせず、結果を改善アクションに結びつけることが制度を有効に活用する鍵です。

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派遣社員のストレスチェック運用を円滑に進めるポイント

派遣元に求められる実務対応

派遣元は派遣社員との直接雇用契約を結ぶ事業者として、下記の項目を中心にストレスチェックを実施します。

  • 実施体制・スケジュール整備:対象者リスト作成、実施スケジュール策定、担当者明確化。複数派遣先勤務者の就業状況も把握。

  • 結果管理と個人情報保護:個人結果は派遣元が管理し、派遣先への提供は統計化・匿名化した集団分析結果に限定。

  • 面接指導・再実施フローの明確化:高ストレス者への医師面接や再実施手順を事前整備。

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派遣先が留意すべき実務ポイント

派遣先は、ストレスチェックの実施義務はありませんが、職場環境の管理者として派遣社員の働く環境を整える責任があります。留意すべきポイントは以下の通りです。

  • 派遣社員のストレス要因を把握しやすい職場づくり
    日常業務の中でストレスを受けやすい業務配置やコミュニケーション不足を把握し、改善策を検討できる体制を整える。

  • 派遣元からの面接指導要請や情報提供への協力
    面接指導や集団分析のための必要情報提供など、派遣元との連携を円滑に行える体制を整えることが重要。

  • 組織全体でのメンタルヘルス対策への意識づけ
    職場改善施策や安全衛生教育の一環として、派遣社員を含む従業員全体のメンタルヘルス対策に対する理解と協力を促す。

ストレスチェックを支援するサービス活用の有効性

ストレスチェックの運用には、準備から実施、そのご対応まで多岐にわたる手続きが必要です。特に派遣社員を含む場合、情報の取り扱いや実施管理が複雑になり、人事・労務担当者の負担が大きくなります。

こうした課題に対応するため、クラウド型ストレスチェックサービスやEAP(従業員支援プログラム)など、外部専門サービスの活用が増えています。クラウドサービスを導入すれば、法令に準拠した実施や集計を効率化し、データの一元管理も可能です。さらにEAPを組み合わせることで、高ストレス者への心理的ケアや復職支援など、実施後のフォローも強化できます。そのサービスの一例を紹介します。

職場のストレスチェック +plus

法令に準拠したクラウド型ストレスチェックサービスです。ストレスチェックの実施準備から、結果の集計、医師面接指導、集団分析、報告書作成までをワンストップでサポートします。必要に応じて、臨床心理士や公認心理師などの専門家によるファローも受けられます。また、紙での実施・集計にも対応しており、受検者のニーズに合わせた柔軟な運用が可能です。派遣元・派遣先の運用実態に合わせて設計できる点が特徴です。

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エムスリーヘルスデザインの従業員支援プログラム(EAP)

ストレスチェック結果をもとに、心理士によるカウンセリングや研修、復職支援などの包括的なメンタルヘルス対策を提供します。派遣社員を含む全従業員の心の健康を継続的に支援し、職場全体の健全化をサポートすることで、社員の定着率向上にも寄与します。

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まとめ|派遣社員のストレスチェックは制度理解と正しい役割分担が鍵

ストレスチェック制度においては、派遣元が「実施」、派遣先が「集団分析・職場改善」を担うという明確な役割分担があります。双方が制度の趣旨を理解し、派遣社員の健康を守るための体制を整えることが、企業全体のリスクマネジメントと生産性向上につながります。ストレスチェックを“実施して終わり”にせず、外部サービスの活用や関係者との適切な連携を通じて、派遣社員を含む全従業員の安心・安全な職場環境の実現を目指しましょう。

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