企業には、労働者に健康診断を受けさせる義務があります。特に、有害業務に従事する労働者は、一般健康診断だけではなく、特殊健康診断も受診する必要があります。
また、健康診断結果に異常所見が認められた際は、適切な事後措置を講じる義務があります。
本記事では、特殊健康診断の目的や流れ、事後措置の内容について詳しく説明します。特殊健康診断には「特殊健康診断」「じん肺検診」「歯科医師による健診」などがありますが、本記事では、「特殊健康診断」と「歯科医師による健診」に焦点を当てて説明します。
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特殊健康診断の目的
特殊健康診断の目的は、有害業務による労働者の健康リスクを早期に発見し、適切な対策を講じることです。
特殊健康診断が義務付けられている主な業務は、以下の通りです。
高気圧業務
放射線業務
特定化学物質業務
石綿(アスベスト)業務
鉛業務
有機溶剤業務
四アルキル鉛業務
また、歯科医師による健診が義務付けられている業務もあり、以下の物質を取り扱う作業に従事している労働者が対象となります。
塩酸・硫酸・硝酸・亜硫酸・フッ酸などのガスを扱う業務
蒸気や粉じんが発生する作業場での業務
歯科医師による健診は、酸蝕症のリスクを評価し、適切な予防策を講じます。
一般健康診断はすべての労働者を対象に実施されますが、一定の有害業務に従事する労働者は、特殊健康診断を受診する必要があります。
特殊健康診断の受診対象者は、有害物質や過酷な作業環境にさらされるため、健康被害のリスクが高まります。
また、一般健康診断と特殊健康診断の検査内容が異なります。
一般健康診断では、身長や体重、採血検査(貧血や肝機能)などの基本的な健康チェックが行われます。
一方、特殊健康診断では、四肢の運動機能の検査や白内障の有無を確認する眼科検査など、業務内容に応じた専門的な検査が追加されます。そのため、一般健康診断と特殊健康診断の両方を適切に受診することが重要です。
企業は、労働者に特殊健康診断を受診させる義務を負っています(労働安全衛生法第66条)。
特殊健康診断を実施しない場合、労働基準監督者からの指導や、最悪の場合、罰則(罰金)の適用対象となる可能性があります。企業は、必ず特殊健康診断を実施しましょう。
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特殊健康診断の流れ
特殊健康診断の流れは、以下の通りです。
診断の実施
結果の通知
事後措置の実施
特殊健康診断や歯科医師による健診の流れは、基本的に一般健康診断と同様です。
それでは、それぞれ詳しく説明します。
1. 診断の実施
特殊健康診断は、対象業務によって診断内容が異なるため、企業は労働者の業務に応じた適切な健康診断を実施しなければなりません。
実施時期は、雇い入れ時・配置替え時・6ヶ月以内ごとに1回の定期検診です。また、特定の業務(特定化学物質業務や石綿業務など)では、退職後も一定期間は特殊健康診断を受診する必要があります。
特殊健康診断は管理が煩雑になりがちですが、健康管理システムを使用することで労働者の特殊業務歴の登録や管理ができます。健康管理システムを導入することでと、健康診断の実施が容易になりますので、ぜひご検討ください。
2. 結果の通知
企業は、健康診断の結果をすべての労働者に通知する義務があります(労働安全衛生法第66条の6)。
異常所見の有無に関わらず、すべての労働者に通知が必要です。異常所見がある場合は、保健指導の実施や受診勧奨など、適切な対応を行いましょう。
労働者が自ら健康診断結果を確認し、健康状態を把握することで、健康維持や疾病予防につながります。
3. 事後措置の実施
健康診断の結果を通知し、要治療や要精密検査と判定された場合は、適切な事後措置を実施する必要があります。
また、健康診断だけではなく、ストレスチェックを実施することもあります。
異常所見が認められた場合は、医師や産業医に相談し、適切な対応を検討しましょう。産業医は労働環境や労働者の健康状況を把握し、医学的な知見を基に助言を行う医師です。
従業員50人以上の企業では産業医の選任が義務付けられています。そのため、産業医の助言を活用しましょう。
従業員50人未満の企業では産業医の選任義務はありませんが、地域産業保健センターや健康診断の実施機関を活用することが推奨されます。
健康診断結果を踏まえ医師・産業医と相談の上、就業判定を行います。相談する際は、労働者の作業環境や労働時間などの情報を提供する場合もあります。
就業判定は、通常勤務・就業制限・要休業の3つに分類されます。
通常勤務:特別な措置は不要。ただし、医師との相談記録を保存し、必要に応じてフォローアップを実施しましょう。
就業制限:労働者の健康状態に応じた措置が必要です(労働時間の短縮、作業場所の変更、深夜業の回数の減少)。
要休業:労働者の療養のために、一定期間の休業を設ける必要があります。
就業制限や要休業の判断が下された場合は、産業医および労働者と十分に話し合い理解を得た上で措置を実施しましょう。
健康管理システムでは、就業判定の一括管理、面談記録の整理や保存、意見書や紹介状の作成支援が可能です。健康管理業務の負担軽減と適切な対応のため、導入をご検討ください。
具体的な事後措置の例
ここでは、具体的な事後措置について説明します。
通常勤務と判断された場合、特別な事後措置を行う必要はありません。
就業制限が必要と判断された場合は、勤務内容に制限を設ける必要があります。
以下のような類型に分けることができます。
◎類型1:健康状態の悪化を防ぐための制限
対象:持病の悪化が懸念される労働者(例:心不全や腎不全を持つ労働者の重筋作業)
措置例:重筋作業の禁止・軽減、休憩時間の増加、勤務時間の短縮
◎類型2:業務上の安全確保のための制限
対象:健康状態が原因で事故・災害のリスクがある労働者(例:不整脈や脳疾患を持つ労働者)
措置例:高所作業の禁止・転換、安全装置の着用、同僚との連携強化
◎類型3:適切な健康管理を促すための制限
対象:生活習慣病のリスクが高く、現在の勤務状況が受診や健康管理を妨げている労働者(例:高血圧や高血糖を持つ労働者)
措置例:夜勤の禁止・転換、勤務時間の調整、メンタルヘルスケアなど
要休業と判断された場合は、労働者の健康回復を目的として、一定期間の休業を実施する必要があります。
措置は、労働者の健康確保を目的としており、不利益な取扱いは禁止です。
不当な解雇(労働基準法第19条、労働契約法第16条)
契約更新の拒否(有期雇用労働者への不当な対応)
不当な配置転換や職位の変更(不利益な異動・降格など)
医師・産業医の意見を無視した措置の実施
法令に基づかない就業制限や休業措置の強要
これらの行為は、労働契約法や労働基準法に違反する恐れがあります。
企業は措置の実施前に、労働者と十分な協議を行い、理解を得ることが重要です。
事後措置の実施前には、必ず企業と労働者間で話し合いを行い、労働者の理解を得ることが重要です。
事後措置の実施後、労働者の健康状態が改善した場合は、措置の緩和や解除を検討する必要があります。この際、産業医などの医師と再面談を行い、適切な判断を仰ぎましょう。
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企業が果たすべき役割
特殊健康診断を行う上で、企業が果たすべき役割は以下の通りです。
健康診断の計画的な実施
結果の適切な管理
労働者とのコミュニケーション
法令の遵守
それぞれ詳しく解説します。
健康診断の計画的な実施
健康診断を計画的に実施することは、企業の重要な責務の一つです。
企業は、労働者に健康診断を受診させる義務を負っており、これは労働安全衛生法により定められています。
この義務は、企業が労働者の安全と健康を確保するために果たすべき「安全配慮の義務」の一環です。
従業員が1人でも、健康診断の実施は必要です。また、特殊健康診断は、6ヶ月に1度の定期的な実施が義務付けられています。
また、健康診断にかかる費用は原則として企業が負担することが求められています。
結果の適切な管理
企業には、特殊健康診断の結果を適切に管理する義務があります。保存期間は業務ごとに異なり、具体的には以下の通りです。
高気圧業務健康診断:5年
電離放射線健康診断:30年
除染等電離放射線健康診断:30年
特定化学物質健康診断:5年(特別管理物質は30年)
石綿(アスベスト)健康診断:40年
鉛健康診断:5年
有機溶剤健康診断:5年
四アルキル鉛健康診断:5年
また、健康診断の結果は「健康診断個人票」に記録し適切に保存する必要があります。
常時50人以上の労働者がいる場合、健康診断結果の報告書を労働基準監督署に提出する義務があります。
健康診断結果には、労働者の個人情報が含まれているため、情報漏洩を防ぐためにも適切な管理が必要です。
健康管理システムを利用することで、健康診断の結果をデータベースで一元管理できます。これにより、業務の効率化や労働者の健康増進につながるでしょう。
導入する際は、プライバシーマークやISMS認証を取得しているか、また、セキュリティ強化機能(アクセス制限・データ暗号化など)が備わっているかを確認し、適切な健康管理システムを選びましょう。
労働者とのコミュニケーション
健康診断において、企業や事業所は、受診案内・結果通知・事後措置の実施時に、労働者と適切にコミュニケーションを取ることが求められます。
企業は、健康診断の実施について、労働者へ適切に周知・案内を行う必要があります。案内方法は社内報や個人宛のメール、掲示板の活用など様々です。
案内に記載する内容は、健康診断の受診対象者・健康診断の内容・健康診断を行う日時や場所・受診時の注意事項などです。
健康診断の結果通知は、企業に義務付けられています(労働安全衛生法第66条の6)。 異常所見がなかった場合でも、すべての労働者に健康診断結果を通知する必要があります。
このように、企業は健康診断を通じて労働者と何度もコミュニケーションを取る機会があります。労働者の健康と安全を守るためにも、企業は積極的に労働者とコミュニケーションを取り、健康管理を支援しましょう。
法令遵守
健康診断実施後、企業が遵守すべき法令には、健康診断結果に関する医師・産業医の意見聴取や、健康診断の事後措置の実施などが含まれます。
健康診断の結果、異常所見が認められた労働者に対しては、医師や産業医の意見を聴取する義務があります。
企業は、労働者の健康状態を考慮し、医療機関を受診するべきかについて、医師や産業医の意見を求める必要があります。意見聴取は、健康診断実施日から1ヶ月以内に行わなければなりません。
異常所見が認められた労働者には、適切な事後措置を行うことが企業の義務です。企業は、労働者の健康状態や業務内容を考慮し、適切な対策を実施する必要があります。決して企業の判断のみで措置を決定せず、労働者と十分に協議をし、理解を得た上で実施しましょう。
もちろん、健康診断を適切に実施すること自体も企業の義務です。診断の実施だけではなく、異常所見が認められた場合は、適切な事後措置を講じることが重要です。
労働者への影響
特殊健康診断を実施により、労働者には以下のようなメリットがあります。
健康リスクの低減
安全で快適な労働環境の提供
長期的な健康維持
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健康リスクの低減
特殊健康診断の結果をもとに、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・作業環境測定を実施することで、労働者の健康リスクを軽減できます。
同じ業務を続けていた労働者が業務内容を変更したり、労働時間を短縮したりすることで、特定の健康リスクや身体的負担を軽減できます。
また、作業環境測定を実施すると、作業場の問題を早期に発見でき、適切な対策を講じることで労働者の安全確保につながります。
安全で快適な労働環境の提供
特殊健康診断の結果をもとに、施設の改善や設備の設置・整備を行うことで、安全で快適な労働環境の提供が期待できます。
具体的には、有害物質が発生する作業場の換気機能を強化することや、防護服の利用などが挙げられます。これにより、労働者の負担が軽減され、健康と安全の向上につながるでしょう。
長期的な健康維持
特殊健康診断の結果に基づき、医師や保健師による保健指導を実施することで、長期的な健康維持が期待できます。
保健指導の主な内容は、生活習慣の改善に関するアドバイス・作業方法の見直しや安全対策の指導・必要に応じた休養の推奨などです。適切な保健指導により、労働者は健康リスクを把握し、予防策を講じることができます。
まとめ
特殊健康診断の事後措置は、労働者の安全を守ることを目的として実施されます。また、労働者だけでなく、企業にとっても業務の効率化や施設の改善、健康経営の推進といったメリットがあります。
特殊健康診断を受診した後は、労働者への結果通知や、適切な事後措置の実施を行いましょう。
企業が果たすべき役割として、健康診断の計画的な実施・結果の適切な管理・労働者との円滑なコミュニケーション・法令遵守などがあります。
労働者にとってのメリットは、健康リスクの低減・安全で快適な作業環境の確保・長期的な健康維持があります。必ず健康診断を受け、健康管理に努めましょう。
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