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公開日:

2025/12/26

更新日:

2025/12/26

社内にハラスメント相談窓口を設置する方法やメリット・デメリットを解説

上田莉子(産業医)

社内にハラスメント相談窓口を設置する方法やメリット・デメリットを解説

ハラスメント相談窓口の設置が求められる理由

ハラスメント相談窓口の設置は、職場環境の改善と、法令順守のふたつの意味で重要です。

職場環境の改善の観点では、ハラスメント相談窓口は、従業員が安心して働くために必要です。ハラスメントの問題は従業員の精神的な健康に影響を及ぼすため、早期の対応が求められます。また、相談窓口の設置は企業の信頼性を高め、従業員の定着率向上にも寄与します。また、相談窓口の存在を周知し、利用しやすい環境を整えることが重要です。

法令順守の観点では、とくにパワーハラスメント(パワハラ)について、大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月から、事業主に防止措置義務が課されました。これは、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)で定められています。

その他のハラスメントについても、防止措置の義務があります。日本ではハラスメントという言葉を一括で定義する法律はありませんが、種類ごとに個別の法律で防止義務が定められています。それぞれのハラスメントとそれを定義する法律には次のようなものがあります。

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パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメント(パワハラ)の定義の要約:

次の3つの要件をすべて満たすもの

  • 優越的な関係を背景とした言動

  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

  • 労働者の就業環境が害されるもの

パワハラを定義する法律:労働施策総合推進法(パワハラ防止法)

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメント(セクハラ)の定義の要約

  • 職場における性的な言動により、

  • 労働条件について不利益を受ける

  • 就業環境が害される

上記に該当する場合がセクハラになります

セクハラを定義する法律:男女雇用機会均等法

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マタニティ・パタニティハラスメント(マタハラ・パタハラ)

マタニティ・パタニティハラスメント(マタハラ・パタハラ)の定義の要約

  • 妊娠・出産・育休・介護休業等を理由とした不利益取扱いや嫌がらせ

マタハラ・パタハラを定義する法律

  • 男女雇用機会均等法

  • 育児・介護休業法

カスタマーハラスメント(カスハラ)

カスタマーハラスメント(カスハラ)の定義の要約

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求内容の妥当性に照らして、その要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであり、かつ当該手段・態様により労働者の就業環境が害されるもの

カスハラを定義する法律:2025年6月11日に改正労働施策総合推進法が公布され、2026年内の施行が決定済み

ケアハラスメント(ケアハラ)

ケアハラスメント(ケアハラ)定義の要約

  • 介護や育児などの家庭的負担を理由に嫌がらせや差別的な取扱いを受けること

ケアハラと関連する法律

  • 一般的な職場環境配慮義務の枠組みで、間接的に対応する必要があると考えられている

  • 労働契約法5条の安全配慮義務

  • 男女雇用機会均等法等における差別的取扱いの禁止(関連する場面)

法律で定義され、企業に防止義務が課されているハラスメントは以上になります。

しかし、法律で明確に定義のない種類のハラスメントも、

  • 企業が安全配慮義務(労働契約法)を怠った行為とみなされる

  • 不法行為(民法)に相当する

  • パワハラ・セクハラに該当する

ことで、法的責任が問われるケースは非常に多いので事業主は注意が必要です。

参考:

厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

https://www.mhlw.go.jp/content/11921000/000894063.pdf

ハラスメント相談窓口の設置方法

では実際ハラスメント相談窓口はどのように設置するのでしょうか。

ここでは、設置の方法を次のように手順化しました。

  1. 相談窓口の設置形態を決める

  2. 相談担当者を選任する

  3. 相談方法を複数用意する

  4. 相談後の対応フローを明文化する

  5. 利益取扱いの禁止を明示する

ハラスメント相談窓口はただ設置するだけでは意味がありません。社内周知の方法を考え、実際に利用しやすいよう相談窓口があることを広く告知することが重要です。

では、順にみていきましょう。

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相談窓口の設置形態を決める

ハラスメント相談窓口を設置するにあたっては、まずその設置形態を検討する必要があります。

相談窓口の形態には、大きく分けて三つのパターンがあります。社内の窓口のみを設置する方法、社外の窓口のみを設置する方法、そして社内窓口と社外窓口を併設する複数窓口制です。

社内窓口を設ける場合、人事部門や総務部門、コンプライアンス担当者が担うケースが一般的です。社内事情や組織構造を理解している点が強みであり、迅速な初期対応につなげやすいというメリットがあります。一方で、相談者が「社内の人には話しにくい」と感じる可能性がある点には配慮が必要です。

社外窓口としては、弁護士や社会保険労務士、EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)などの専門機関が適しています。第三者の立場から対応できるため、相談者が安心して利用しやすく、客観性を確保しやすい点が特徴です。

厚生労働省も、ハラスメント防止措置として、複数の相談ルートの確保や外部窓口の併設を推奨しています。相談先を一つに限定せず、状況や本人の意向に応じて選択できる体制を整えることで、ハラスメントの早期把握と適切な対応につなげることが可能となります。

自社の規模や体制、職場の実情を踏まえたうえで、相談しやすく実効性の高い窓口設計を行うことが重要です。

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参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントに関する指針」

https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001162640.pdf

担当者を選任する

ハラスメント相談窓口を機能させるためには、誰を担当者に選任するかが極めて重要です。
担当者には、少なくとも次の三つの要件が求められます。第一に、公平性・中立性を保てること。第二に、守秘義務の重要性を十分に理解していること。第三に、ハラスメントに関する基本的な知識を有していることです。

特にハラスメントに関する知識については、法令や社会的要請の変化を踏まえ、定期的な研修を通じてアップデートしていくことが望まれます。担当者個人の理解に任せるのではなく、組織として教育体制を整えることが重要です。

なお、直属の上司のみを相談窓口の担当者とすることは、必ずしも適切とは言えません。相談内容によっては、上司が当事者や加害者となる可能性があり、相談者が心理的な抵抗を感じてしまうおそれがあるためです。

相談者が安心して声を上げられるよう、複数名の担当者を配置する、異なる部署や立場の者を含めるなど、相談しやすさに配慮した体制を構築することが、実効性のある相談窓口運営につながります。

相談方法を複数用意する

ハラスメント相談窓口を実効性のあるものにするためには、相談のしやすさへの配慮が欠かせません。
相談方法は、「いつでも」「誰でも」「自分に合った方法を選べる」ように設計することが重要です。相談のハードルを下げることで、問題の早期把握や深刻化の防止につながります。

具体的には、次のような複数の相談手段を確保しておくことが望ましいでしょう。

  • 面談による相談

  • 電話による相談

  • メールによる相談

  • 専用フォームを利用した相談

  • 書面による相談

  • 可能な範囲での匿名相談

対面での面談を希望する人がいる一方で、直接話すことに抵抗を感じる人も少なくありません。電話やメール、専用フォームなど、状況や心理状態に応じて選択できる手段を用意することで、相談の機会を広げることができます。

また、匿名での相談を受け付ける仕組みを取り入れることで、実名では相談しにくい初期段階の悩みや違和感を拾い上げやすくなります。匿名相談については、対応範囲や限界をあらかじめ明確にしたうえで運用することが重要です。

このように、相談方法を複数用意し、柔軟に対応できる体制を整えることが、ハラスメントの早期発見と適切な対応につながります。

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相談後の対応フローを明文化する

ハラスメント相談窓口を設置するだけでは、十分とは言えません。

相談後にどのような対応が行われるのかをあらかじめ明文化し、「相談すれば、事実確認がなされ、公平かつ適切な対応が行われる」という安心感を従業員に示すことが重要です。

対応フローが不明確なままでは、相談者が不安を感じ、相談をためらってしまうおそれがあります。企業としては、手続の透明性と公正性を確保する観点からも、相談後の流れを明確にしておく必要があります。

最低限、次のような対応フローを整理し、社内に周知しておくことが望ましいでしょう。

まず、相談受付を行い、相談内容を適切に記録します。

次に、相談者本人から事情を聴取する事実確認(ヒアリング)を実施します。

その後、必要に応じて行為者や第三者への聴取を行う関係者調査を進めます。

調査結果を踏まえ、事実認定を行ったうえで判断および是正措置を決定します。

あわせて、同様の事案を防ぐための再発防止策を検討・実施します。

最後に、相談者や関係者へのフォローアップを行い、問題が解決に向かっているかを確認します。

このように対応フローを明文化し、あらかじめ共有しておくことで、相談者の心理的負担を軽減するとともに、企業としても一貫性のある適切な対応を行うことが可能となります。

相談記録や面談記録の管理には、健康管理システム「ハピネスパートナーズ」の活用が有効です。紙やExcelでの管理から脱却することで、業務工数を最大87%削減し、適切な対応漏れを防ぐことができます。

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利益取扱いの禁止を明示する

ハラスメント相談窓口を実効性のあるものとするためには、社員が「相談しても不利益を受けない」と安心して利用できる環境を整えることが不可欠です。
そのため、相談したこと自体を理由として、仕事上の不利益な取扱いを行わないことを明確にし、社内に周知する必要があります。

具体的には、相談を理由として解雇や降格、人事評価の引下げといった不利益な取扱いを受けることがないこと、また、報復的な言動や嫌がらせを行わないことを明示することが重要です。これらの内容は、就業規則や社内規程に明確に記載し、全従業員に周知しておくことが望ましいでしょう。

不利益取扱いの禁止を明文化することは、法令遵守の観点から求められるだけでなく、相談窓口の信頼性を高め、早期の相談や問題発見につながります。
社員が安心して声を上げられる体制を整えることが、ハラスメント防止の実効性を高める重要な要素となります。

以上が、ハラスメント相談窓口の設置手順となります。

相談窓口は、設置して終わりではありません。実際に機能させるためには、「知られていること」「使えると思われていること」が不可欠です。そのため、相談窓口を設置した後は、次のような媒体を活用し、周知を徹底しましょう。就業規則、社内イントラネット、社員ハンドブック、研修資料、掲示用ポスター、新入職員向けオリエンテーションなど、複数の接点を通じて繰り返し伝えることが重要です。

ハラスメント相談窓口の設置は、単なる「守り」の施策ではありません。離職の防止、訴訟や労働基準監督署対応の予防、組織文化の健全化、さらには管理職を不当な加害認定から守るための経営リスク管理の一環です。パワーハラスメント対策は、感情論に流されることなく、制度として粛々と進めていく必要があります。

一方で、相談窓口が形骸化してしまうケースも少なくありません。よくある問題としては、窓口自体は存在するものの連絡先が分からず、実質的に機能していない場合や、担当者が人事担当者一人のみで、バイアスがかかった対応になったり、相談者を萎縮させてしまったりするケースが挙げられます。

また、匿名での相談が認められず記名必須となっていることで相談が抑制されたり、相談後の流れが不透明なために二次被害が生じたりするおそれもあります。

こうした事態を防ぐためには、相談窓口担当者を含む関係者への継続的な研修を行い、制度の運用状況を定期的に見直すことが欠かせません。相談窓口が「あるだけの制度」にならないよう、実効性を意識した運用を心がけましょう。

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社内・社外のハラスメント相談窓口設置のメリット・デメリット

ハラスメント相談窓口を設置する際には、社内に設けるか、社外に設けるか、あるいは両者を併用するかを検討する必要があります。それぞれにメリットと留意点があり、自社の体制や職場環境に応じた選択が重要です。

社内に相談窓口を設置する場合

社内事情や人間関係、業務内容を理解したうえで対応できる点が挙げられます。初動対応が比較的迅速に行えることも利点です。一方で、担当者には高い信頼性と理解力が求められます。相談内容の秘密保持が徹底されなければ、相談者が安心して利用できません。また、担当者の対応力を維持・向上させるためには、定期的な研修によるスキルアップが欠かせません。

社外に相談窓口を設置する場合

第三者として中立的な立場から対応できる点が大きなメリットです。弁護士や社会保険労務士、EAPなどの専門機関を活用することで、相談者が安心して相談しやすくなり、客観性の高い情報収集や助言が期待できます。一方で、社内事情の把握に時間がかかる場合があるため、社内窓口との連携体制を整えておくことが重要となります。

このように、社内・社外それぞれの特徴を踏まえたうえで、複数窓口制を採用するなど、相談しやすさと実効性の両立を図ることが、ハラスメント対策を機能させるポイントと言えるでしょう。

ハラスメントの外部相談窓口にはエムスリーヘルスデザインのEAPサービス

ハラスメント相談窓口の外部相談窓口としておすすめなのが、エムスリーヘルスデザインのEAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)です。エムスリーヘルスデザインはm3.comを運営し、34万人以上の医師、20万人以上の薬剤師が登録するエムスリーグループの知見を活かしたサポートが可能です。

エムスリーヘルスデザインが提供するEAPは、専門家によるカウンセリングと人事・産業医との連携を組み合わせ、従業員一人ひとりの悩みを早期にケアしながら、職場全体の活力と定着率を高める仕組みです。

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主なサービス内容

  • 専門家によるカウンセリング:

公認心理師などの資格を持つカウンセラーが、従業員の相談に丁寧に対応。

安心して話せる場を提供し、問題の早期解決をサポートします。

  • 人事・産業医との協働体制:

個人対応だけで終わらせず、企業の課題を踏まえた職場環境の改善へと発展させます。

  • ストレスチェックとの連動:

法定制度と連携し、高ストレス者への面談支援から職場改善までを一貫サポート。

ストレスチェック後のフォロー体制を強化します。

EAP導入による効果

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EAPを導入することで、次のような成果が期待できます。

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  • 人事・管理職向け

専任の心理士が職場環境や人間関係に関する課題を分析し、改善提案を行うことで組織全体の健康度向上を支援

  • メンタル不調を抱えながら勤務する従業員向け

カウンセリングを通じて寄り添った支援を実施。ストレスチェック後の分析結果を活用し、ラインケア・セルフケア両面の研修も提供します。

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充実したサポート体制

  • メンタル以外の相談も可能(回数無制限)、従業員家族までサポート対象

  • 専門家(臨床心理士・公認心理師・EAPコンサルタントなど)による直接対応

  • 必要に応じた医療機関や専門機関への紹介

  • 大阪・京都エリアでは訪問対応にも対応

  • 職場復帰支援もトータルで対応

  • 復職支援に向けた本人・主治医・家族・人事担当者との連携

  • カウンセリングによる心理的サポート

  • 上司・人事・本人を交えた復職前面談の調整

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