ストレスチェックにかかる費用の負担者
ストレスチェックとは、企業が用意した質問票に労働者が回答し、その結果から心身のストレス状態を把握する検査です。メンタルヘルス不調を未然に防ぐための重要な取り組みであり、労働者が50人以上いる事業所では労働安全衛生法により実施が義務付けられています。
さらに、労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律により、2028年までに、従業員数にかかわらず、すべての事業場でストレスチェックの実施が義務化されることが決定されました。今後は規模を問わず、すべての事業者にとって避けて通れない制度になると考えられます。
ただし、このストレスチェックの実施には費用が発生します。そして、その費用は事業者が全額負担することが法律で定められています。
本記事では、
ストレスチェックにかかる費用の内訳
外部委託した場合の費用相場
費用負担を軽減できる助成金制度
についてわかりやすく解説します。ストレスチェックの導入を検討中の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
関連記事:ストレスチェックの外部委託ガイド|メリット・デメリットから業者の選び方まで
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参考:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497667.pdf
ストレスチェックの意義
ストレスチェックというリスクマネジメント法
労働者の心の不調は、休職や離職といった人材の損失につながるだけでなく、組織全体の生産性を下げる大きな要因となります。特に注意が必要なのは、集中力の低下によって労働災害や事故を引き起こすリスクが高まる点です。これは職場にとって深刻なダメージとなりかねません。
さらに、企業が従業員のメンタルヘルス対策を怠った場合、損害賠償を請求されるなど法的責任を問われるケースも想定されます。とりわけ高ストレスな環境にある職場では、迅速な対応と改善が不可欠です。
こうした状況を背景に、ストレスチェックは従業員の心の健康を守ると同時に、企業にとってはリスクマネジメントの柱となる取り組みと位置づけられます。厚生労働省が令和5年に実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」でも、仕事や職業生活に強い不安・悩み・ストレスを抱えている労働者は約8割にのぼると報告されています。この数字が示すのは、もはや「自己管理」に任せるレベルではなく、組織全体で戦略的に取り組むべき課題であるという事実です。
参考:厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要(個人調査)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r05-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
ストレスチェックという戦略
メンタルヘルス不調による経済的損失は年間で数兆円規模に及ぶと試算されており、早期介入や職場改善を進めることは、経営的な観点からも避けて通れない課題です。ストレスチェック制度の導入は、単なる法令遵守にとどまらず、企業の持続的成長を支える重要な戦略のひとつと言えるでしょう。
ストレスチェックにかかる費用内訳
実際にストレスチェックを行うにあたり、どの項目にどれだけ予算配分する必要があるかを把握することが大切です。主な費用の内訳は以下のとおりです。
関連記事:企業のストレスチェック実施手順|準備から報告まで徹底解説
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実施担当者の人件費
ストレスチェックを担当する社内スタッフや外部委託先の人件費です。
ストレスチェックの実施費用
質問票やオンラインシステムの使用料、集計作業などにかかる費用です。
高ストレス者への産業医面接指導費
面接時間や回数に応じて発生する、産業医への謝礼や交通費などです。
集団分析の費用
部署ごとの傾向や課題を可視化するための集計・分析作業費です。
関連記事:ストレスチェックの分析完全ガイド|集団分析の目的から職場改善への活用法まで
職場改善にかかる費用
分析結果をもとに行う職場環境の改善策や研修などの実施費用です。
なお、総費用は従業員数や契約する産業医・外部業者の条件によって大きく変動します。
小規模な事業所では数万円程度、大規模事業所では数十万円以上かかる場合もあります。
ストレスチェックの費用相場
ストレスチェックにかかる費用内訳
厚生労働省が提供している標準的な質問票(57項目版)は、無料で利用できます。そのため、紙の調査票を用いた最小限の実施であれば、直接的な費用は発生しません。
ただし、印刷や配布、回収、集計、結果通知といった一連の事務作業を行う必要があるため、社内の人件費や事務負担は見逃せないコストとなります。
ストレスチェックの結果「高ストレス」と判定された従業員には、本人の希望に応じて産業医などによる面接指導を行う必要があります。
この費用は1回あたり1万〜5万円程度が一般的な相場です。特に産業医が面談を行う場合には、1時間あたり2万〜2万5千円程度と見込んでおくとよいでしょう。
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参考:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/stress-check_j.pdf
ストレスチェックを外注した場合の費用相場
導入(初期)費用:約20,000~55,000円
まずは、導入費用、つまり基本料金についてです。
法人1社あたり、Web形式での設定費込みの場合も同様の価格帯です。
初期費用には質問票のカスタマイズ、システム構築、実施計画の策定などが含まれることが多いです。
実施費用(1人あたり):約300~600円
幅は広く、最大2,000円/人程度のサービスもあります。
規模に応じた1人あたり料金:従業員数が多いほど単価が下がる傾向です。
また、Web媒体なのか、紙面でのストレスチェックなのか、実施方法によって費用に差があります。
面接指導費用:10,000~50,000円/件(標準的には20,000~25,000円程度)
集団分析費用:1グループあたり約15,000~25,000円
詳細な集計やレポート作成を含む場合、1回あたり 10,000~50,000円という見積もりもあります。
相場まとめ
導入費用 | 約20,000~55,000円 |
実施費用(1人あたり) | 約300~600円 |
面接指導費用 | 10,000~50,000円/件 |
集団分析費用 | 1グループあたり約15,000~25,000円 |
いかがでしたでしょうか。
委託の際は、面接指導や集団分析が含まれるか、追加費用があるかを必ず確認しましょう。単純な安さだけでなく、年間トータルコストやサポート体制、継続性も比較検討することが重要です。
ストレスチェックを外注した場合のメリット・デメリット
ストレスチェックの実施を外部に委託すると、社内の負担を大幅に減らせるというメリットがあります。
しかし、その一方で外部委託には注意すべきデメリットも存在します。
ここでは、ストレスチェックを外部委託する場合のメリットとデメリットをあらためて整理し、判断の参考になるポイントを箇条書きでご紹介します。
関連記事:ストレスチェック導入マニュアル|準備から実施までの全手順を解説
関連記事:【小規模事業所向け】ストレスチェック導入ガイド|義務化への手順・助成金・外部委託
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ストレスチェック外部委託のメリット
業務負担の軽減:調査票の作成、集計、分析、面接指導などを専門機関に任せられ、社内の負担を削減できます。
匿名性の向上:第三者機関による集計で、従業員が安心して正直に回答でき、実態把握の精度が高まります。
専門的対応:結果分析や改善提案を専門家に依頼でき、医療法人に委託すれば産業医や心理士による面接・フォローも可能です。
ストレスチェック外部委託のデメリット
コストの発生:基本料金や受検単価が必要。契約範囲や料金体系の事前確認が欠かせません。
透明性の低下:実施状況や費用の妥当性が見えにくくなるため、定期的な報告を受ける仕組みが有効です。
柔軟性の不足:自社特有の事情に対応できない場合があり、理解度の高い業者選びが重要です。
セキュリティリスク:情報漏えいの危険性があるため、セキュリティ体制や認証の有無を必ず確認しましょう。
重要な注意点として、外部委託しても、最終的な責任は事業者にあります。
法令違反や情報管理の不備があれば、企業側が責任を問われます。
便利さだけでなく、安全性と信頼性を確保できる委託先を選びましょう。
ストレスチェックは無料でできる?
結論として、ストレスチェックを無料で行うことは困難です。しかし、特定の条件が揃えば国からの助成金をうけてストレスチェックを実施することができる可能性があります。この助成金について、詳しく解説します。
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ストレスチェックに関する補助金、助成金
ストレスチェックにまつわる助成金には、以下のものがあります。
ストレスチェック助成金
職場環境改善計画助成金
それぞれの需給の条件についてご説明します。
ストレスチェック助成金
ストレスチェック助成金とは、ストレスチェックを実施し、また、医師による面接指導等を実施した従業員50人未満の事業場に対して支給される助成金です。
ストレスチェック助成金は、下記の「対象となる事業主」に該当する事業場が、次の1または2の措置を実施した場合に受給することができます。
ストレスチェック :年1回のストレスチェックを実施した場
ストレスチェックに係る医師による活動:産業医の資格を持った医師が次の①または②を行うこと
①ストレスチェック実施後に面接指導を実施すること
②面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること
また、ストレスチェック助成金を受給する事業場は、次の要件をすべて満たしていることが必要です。
労働保険の適用事業場であること。
常時使用する従業員が派遣労働者を含めて50人未満であること。
ストレスチェックの実施者が決まっていること。
事業者が医師と契約し、ストレスチェックに係る医師による活動の全部又は一部を行わせること。
ストレスチェックの実施及び面接指導等を行う者は、自社の使用者・労働者以外の者であること。
これらの要件を満たすと、助成の対象に応じて、下表の額が支給されます。
ストレスチェックの実施の助成額 :従業員1人につき500円を上限に実費を支給
ストレスチェックに係る医師による活動 1事業場あたり:1回の活動につき21,500円を上限に実費を支給(上限3回)
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職場環境改善計画助成金
職場環境改善計画助成金とは、ストレスチェック後の集団分析結果をもとに、専門家の指導を受けながら「職場環境改善計画」を作成し、その計画に沿って実際に改善を行った事業場に対して支給される助成金です。
【Aコース】と【Bコース】が存在しており、それぞれについて需給の条件がすこし異なります。
職場環境改善計画助成金のAコース
受給要件
職場環境改善計画助成金は、下記の「対象となる事業主」に該当する事業場が、次の措置を実施した場合に受給することができます。
専門家の指導に基づき、職場環境改善計画を作成し、計画に基づき職場環境の改善を実施した場合に受給が可能です。なお、ここでの専門家は、産業医等の医師、保健師、看護師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、臨床心理士等の心理職、労働衛生コンサルタント、社会保険労務士を指します。
満たすべき要項
職場環境改善計画助成金を受給する事業場は、次の要件のすべてを満たしていることが必要です。
労働保険適用事業場であること。
ストレスチェック実施後の集団分析を実施していること。
専門家と職場環境改善指導に係る契約を締結していること。
ストレスチェック実施後の集団分析結果だけではなく、専門家から管理監督者による日常の職場管理で得られた情報、労働者からの意見聴取で得られた情報及び産業保健スタッフによる職場巡視で得られた情報等も勘案して職場環境の評価を受け、改善すべき事項について指導を受けていること。
専門家の指導に基づき職場環境改善計画を作成し、当該計画に基づき職場環境の改善の全部又は一部を実施していること。
専門家から、職場環境改善計画に基づき職場環境の改善が実施されたことの確認を受けていること。
これらを満たすと、【Aコース】では、専門家の指導費用および機器・設備購入費用として、1事業場あたり100,000円を上限に実費が支給されます。 ただし、機器・設備購入費用は50,000円(税込み)を上限とし、かつ、単価50,000円(税込み)以内という制限があります。
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職場環境改善計画助成金のBコース
受給要件
職場環境改善計画助成金は、下記の「対象となる事業主」に該当する事業場が、次の措置を実施した場合に受給することができます。
メンタルヘルス対策促進員の助言・支援を受け、職場環境改善計画を作成し、計画に基づき職場環境の改善を実施した場合に受給が可能です。ここでのメンタルヘルス対策促進員とは、中小規模事業場にメンタルヘルス対策を普及促進するため、産業保健総合支援センターが委嘱したメンタルヘルス対策に関する訪問支援を専門的に行う者のことを指します。
満たすべき要項
職場環境改善計画助成金を受給する事業場は、次の要件のすべてを満たしていることが必要です。
労働保険適用事業場であること。
ストレスチェック実施後の集団分析を実施していること。
メンタルヘルス対策促進員からストレスチェック実施後の集団分析結果の見方やストレスチェック実施後の集団分析結果を踏まえた職場環境改善手法について助言・支援を受けていること。
メンタルヘルス対策促進員の指導に基づき職場環境改善計画を作成し、当該計画に基づき職場環境の改善の全部又は一部を実施していること。
メンタルヘルス対策促進員から、職場環境改善計画に基づき職場環境の改善が実施されたことの確認を受けていること。
これらを満たすと、【Bコース】では、機器・設備購入費用として、1事業場あたり50,000円(税込み)を上限、かつ、単価50,000円(税込み)以内で実費が支給されます。
これらの制度は、事業場が主体的に職場環境の改善に取り組むことを支援し、労働者のメンタルヘルス向上と健全な職場づくりを促進することを目的としています。
参考:厚生労働省「産業保健関係助成金」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000208767.pdf
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