企業において、従業員の健康を守ることは単なる福利厚生ではなく、法律によって定められた重要な義務です。特に健康診断の実施とその後の対応は、労働安全衛生法(安衛法)に直結する業務であり、適切に管理しなければなりません。
しかし、現場の担当者からは「誰が対象になるのか」「費用は誰が持つべきか」「受診を拒否する従業員にはどう対応すればいいのか」といった悩みが絶えません。これらの課題を解決する鍵は、就業規則にあります。
本記事では、健康診断に関する法律上のルールと、就業規則への記載方法、そして煩雑な健康管理業務を効率化するサービスについて詳しく解説します。
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就業規則における健康診断の重要性
健康診断の目的と企業の義務
企業が健康診断を実施する最大の理由は、労働者の健康を維持し、病気の早期発見・早期治療を促進することにあります。労働安全衛生法第66条において、以下のようにと定められています。
「事業者は、労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない」
引用:e-Gov法令検索「労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)」https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057 (アクセス 2026/4/20)
これは企業にとっての義務であり、違反した場合には罰則の対象となるだけでなく、万が一従業員が過労死や健康障害に陥った際、安全配慮義務違反を問われ、多額の損害賠償支払いを命じられた判例も存在します。就業規則に健康診断の規定を設けることは、こうした法的リスクを未然に防ぎ、会社を守るための重要な防衛策となります。
健康診断が従業員の健康を守る理由
従業員自身が健康でなければ、高いパフォーマンスを維持することはできません。健康診断は、従業員自身が自覚症状のない生活習慣病やメンタルヘルスの不調を可視化できます。また、過重労働による健康リスクの判定を行うために不可欠な項目です。会社が定期的に受診を促す仕組みを必要とするのは、個人の健康増進が組織の生産性向上に直結するからです。
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健康診断の種類と対象者
企業が実施すべき健康診断にはいくつかの種類があり、特定の業務や状況に応じて多岐にわたります。ここでは、それぞれ実施のタイミングや頻度について解説します。
一般健康診断の種類
事業者に実施が義務づけられている一般健康診断は下記に示す通りです。
雇入時の健康診断(安衛則第43条):常時雇用する労働者を雇い入れる際に実施。
定期健康診断(安衛則第44条):常時雇用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期的に実施。
特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条):深夜業や坑内労働など、特定の有害な業務に従事する労働者に対し、6ヶ月以内ごとに1回実施。
海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2):6ヶ月以上海外に派遣する、または帰国した労働者に対し実施。


出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf (アクセス 2026/4/20)
一般健康診断で実施すべき「11項目」
定期健康診断において、法律で実施が義務付けられているのは以下の項目です。
基本検査: 既往歴・業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の有無、身長・体重・腹囲・視力・聴力、血圧測定
血液・尿検査: 貧血、肝機能、血中脂質、血糖、尿検査
画像検査など: 胸部エックス線検査、心電図検査
雇入時の健康診断は上記の11項目をすべて受診する必要がありますが、年に1回の定期健康診断では、年齢(35歳および40歳以上の者など)や過去の診断結果、健康状態によって、医師が必要でないと認めるときは省略が可能な項目もあります。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf
健康診断受診対象者の範囲

正社員だけでなく、以下の要件を満たす方(パートやアルバイト)も受診の対象となります。
無期契約、または1年以上の契約更新が見込まれる者
週の所定労働時間が、同種の業務に従事する正社員の4分の3以上である者
対象者の選定や、未受診者の把握は非常に手間がかかる業務です。特に「4分の3」の基準ギリギリの従業員が多い場合、Excelでの管理はミスを招きがちです。
こうした属人的な管理によるリスクを解消し、本来の目的である健康経営に注力するための仕組みが不可欠です。そこで、多くの企業が導入しているのが「ハピネスパートナーズ」です。健康診断の予約管理から未受診者への自動督促まで対応しており、「事務工数を87%削減(※自社調べ)」した実績もあります。バラバラになりがちな健康データを一元管理することで、労基署への報告書作成もスムーズになります。
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健康診断の費用負担と賃金の扱い
実務において最もトラブルになりやすく、人事担当者の頭を悩ませるのが「お金」にまつわるルールです。特に健康診断の費用や、受診中の給与・交通費の扱いは、就業規則に明記されていないと従業員からの不信感を招く原因となります。
ここでは、法的根拠と実務上のトレンドを交えて詳しく解説します。
健康診断費用の負担者
法律上、健康診断の実施は企業の義務であるため、その費用は会社が負担しなければなりません。これには基本項目(法定項目)の受診料が含まれます。
再検査(二次検査)の費用負担
一次検査の結果、再検査が必要となった場合の費用については、法律で明確に定められてはいません。そのため、基本的には「従業員の自己負担」としても法的には問題ありません。ただし、福利厚生や健康経営の観点から、会社が一部または全額を補助する例も増えています。
健康診断受診時間中の賃金
一般健康診断の受診時間に対する賃金についても、法律上の支払義務はありません。しかし、円滑な受診を促すために「労働時間」として扱い、給与を支払うことが望ましい(行政解釈)とされています。一方、特殊健康診断については、業務遂行に密接に関連するため、必ず労働時間として扱い、賃金を支払う必要があります。
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健康診断結果の取り扱いと企業の責任
健康診断結果の管理と企業の義務
会社は、健康診断の結果を「健康診断個人票」として作成し、5年間保存しなければなりません。また、結果に基づき、就業場所の変更や残業禁止などの事後措置について医師の意見を聴く義務があります。
健康診断を拒否する従業員への対応
もし従業員が受診を拒否した場合、会社は受診を命令することができます。なぜなら、労働者にも以下に定められた自己保健義務があるからです。
「事業者が行う健康診断を受ける義務」(安衛法第66条第5項)
「事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする」(安衛法第69条第2項)
引用:e-Gov法令検索「労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)」https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057 (アクセス 2026/4/20)
まずは理由を確認し、業務命令として受診を促します。それでも従わない場合は、就業規則に基づき懲戒処分の対象となる可能性を伝えることも検討すべきですが、強制的になる前にコミュニケーションを尽くすことが重要です。
メンタルヘルス診断を含む包括的な健康診断制度への移行
近年、身体的な健康だけでなく、メンタルヘルス対策の重要性が高まっています。ストレスチェックの結果と健康診断結果を併せて分析し、職場環境の改善に繋げることが求められています。
メンタル不調による休職や退職は、企業にとって大きな損失です。健診結果で「異常なし」でも、心が疲れている従業員は見落とされがちです。受診を拒否する従業員の背景には、会社に知られたくない悩みや、相談相手の不在が隠れていることも少なくありません。こうしたデリケートな課題に対し、会社以外の専門家にいつでも相談できる環境を整えるのが「従業員支援プログラム(EAP)」です。相談回数は無制限で、従業員だけでなくその家族も臨床心理士などの専門家に相談できます。不調の早期発見(1次予防の支援)から、休職後のスムーズな復職支援まで包括的にサポートするため、人事担当者の負担を大幅に軽減できます。
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健康管理に関連する就業規則の規定
トラブルを防ぐためには、就業規則に詳細を定めておくことが不可欠です。
就業規則が果たす健康管理上の役割
就業規則に「健康診断の受診義務」や「結果の提出」について明記することで、従業員に当事者意識を持たせることができます。また、受診拒否や事後措置に関するルールを定めておくことで、いざという時の根拠となります。
健康診断条文作成のポイント
以下に、就業規則に盛り込むべき項目の一覧を挙げます。
受診対象者と具体的な実施時期
基本費用(会社負担)とオプション費用(自己負担)の区分
受診時間における賃金の取り扱い(労働時間とするか否か)
結果の提出義務とプライバシー保護
二次検査の受診勧奨と報告義務
指定医以外の受診(従業員が自ら指定する医師による受診と、その結果の提出)
健康診断後のフォローアップと改善措置の規定化
診断結果を受けて、必要に応じて就業制限を行うことや、産業医による面談を実施することを規定しておきましょう。これにより、健康リスクの高い従業員に対して、迅速かつ法的に正当な対応が可能になります。
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まとめ
健康診断は、法律を守るためだけのものではありません。従業員が安心して働ける環境を整え、企業の持続的な成長を支える基盤です。そのためには、適切な就業規則の整備と、効率的な管理体制の構築が欠かせません。
もし、以下のような課題がある場合は、専門のサービス活用を強くおすすめします。単なる事務代行ではなく、データに基づいた健康経営を推進することで、離職防止や生産性向上といった確かな成果へと繋げることが可能です。
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企業の健康管理は、制度(就業規則)と仕組み(システム・サービス)の両輪で動かすのが成功の近道です。まずは、現状の運用に無理がないか、見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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