海外赴任者に健康診断が必要になるケース
海外赴任者の健康診断について、まず押さえておきたいのが対象となる従業員です。
労働安全衛生規則第45条の2では、事業者が労働者を6か月以上海外に派遣しようとする場合、あらかじめ健康診断を実施することを定めています。また、6か月以上海外に派遣した労働者を帰国させ、国内の業務に就かせる場合にも健康診断が必要です。
つまり、企業側では大きく以下の2つのタイミングを管理する必要があります。
- 6か月以上の海外派遣を行う前
- 6か月以上の海外派遣を終え、帰国後に国内業務へ就かせるとき
「海外赴任者だから年1回の定期健康診断だけ受診させればよい」というわけではない点に注意しましょう。
また、海外派遣労働者の健康診断については、所轄労働基準監督署長への結果報告は必要ないとされています。
海外赴任前の健康診断で必要な項目
海外赴任前の健康診断は、通常の定期健康診断に準じた項目を基本として実施します。
主な項目は以下のとおりです。
- 既往歴・業務歴の調査
- 自覚症状・他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力、聴力
- 胸部エックス線検査
- 血圧測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
定期健康診断では、年齢など一定の条件を満たした場合に医師の判断で一部項目を省略できるケースがあります。一方、海外派遣労働者の健康診断では、定期健康診断とは省略の取り扱いが異なるため、通常の健診と同じ感覚で項目を設定しないことが重要です。
厚生労働省の資料でも、海外派遣労働者の健康診断では、定期健康診断で40歳未満(35歳を除く)の者について省略可能とされている血液検査や心電図検査について、省略できないことが示されています。
参考:厚生労働省「健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」
医師が必要と判断した場合に追加する項目
海外赴任前には、医師が必要と認める場合、さらに次の検査を追加します。
- 腹部画像検査(胃部エックス線検査、腹部超音波検査)
- 血液中の尿酸量の検査
- B型肝炎ウイルス抗体検査
- ABO式・Rh式血液型検査
これらは全員に一律で実施する項目ではなく、医師が必要と認めた場合に実施する検査です。
そのため、人事・労務部門だけで「この従業員はこの項目」と判断するのではなく、産業医や健診機関などと連携して受診内容を決める必要があります。
帰国後の健康診断で必要な項目
6か月以上海外に派遣した従業員が帰国し、国内業務に就く際にも健康診断を実施します。
基本となる検査は派遣前と同様ですが、医師が必要と認める場合に追加される項目の一部が異なります。
帰国後に追加される可能性がある項目は次のとおりです。
- 腹部画像検査
- 血液中の尿酸量の検査
- B型肝炎ウイルス抗体検査
- 糞便塗抹検査
派遣前に含まれるABO式・Rh式血液型検査に代わり、帰国後には糞便塗抹検査が追加項目として定められているのが特徴です。
このように、同じ海外派遣者向け健康診断でも、派遣前なのか帰国後なのかによって必要となり得る検査が異なります。
企業側で受診案内を作成する際は、通常の定期健診、海外派遣前健診、帰国後健診を区別して管理することが重要です。
海外赴任者の健康診断で企業が注意したいポイント
海外赴任者の健康管理では、健診項目だけ確認しておけばよいわけではありません。特に人事・労務担当者は、次のような実務上の課題にも対応する必要があります。

1.赴任予定から逆算して健診を手配する
海外赴任は、辞令の発令から出国までの期間が短いケースもあります。
ビザの取得や引っ越し、各種社内手続きと並行して健康診断を受診してもらう必要があるため、健診手配が後回しになると、希望する医療機関で予約が取れないことも考えられます。
人事異動の情報を把握した段階で健診対象者を抽出し、早めに受診案内を行える仕組みを整えておくことが重要です。
受診案内の作成から日程調整までをアウトソーシングできるサービスを活用するのも選択肢の一つです。
2.定期健康診断との重複を確認する
海外赴任前後の健診と、会社で実施している定期健康診断の時期が近いケースもあります。
一方で、「最近定期健診を受けたから、海外赴任前健診は不要」と単純に判断することはできません。海外派遣労働者には特有のルールがあるため、いつ、どの健診を受け、どの検査項目を実施したのかを確認したうえで対応する必要があります。
健診結果や受診履歴が部署ごとのExcelや紙で管理されていると、確認に時間がかかり、受診漏れにつながるリスクも。部署や拠点ごとに分散した健康データをクラウド上で一括管理し、受診履歴や検査項目を時系列でスムーズに照会できる環境整備が望まれます。
3.赴任前だけでなく帰国後まで管理する
海外赴任者の管理で見落としやすいのが帰国後の健康診断です。
派遣前は出国日という明確な期限があるため管理しやすい一方、帰任後は異動や引き継ぎなどが重なり、健康診断の案内が漏れる可能性があります。
「誰が海外赴任中なのか」「いつ帰国するのか」「帰国後健診を受けたか」といった情報まで継続的に管理できる体制が必要です。
海外赴任者を含め、複雑化しやすい健診管理を漏れなく効率的に進めるためのノウハウについて、以下の資料もあわせてご活用ください。
海外赴任者が多い企業ほど健診管理が複雑になりやすい
海外赴任者が数名であれば、人事担当者が個別にメールを送り、Excelで受診状況を管理する方法でも対応できるかもしれません。
しかし、赴任者が増えてくると、
「誰が6か月以上の派遣対象なのか」
「派遣前健診を受診済みか」
「必要な検査項目を満たしているか」
「帰国予定日はいつか」
「帰国後健診を受けたか」
といった情報を一人ひとり確認する必要があり、担当者の負担は大きくなります。
加えて、海外赴任者だけでなく国内勤務者の定期健診や特殊健康診断なども同時に管理している企業では、対象者の抽出から医療機関への予約、受診案内、未受診者への連絡、結果の回収まで、多くの業務が発生します。
現行の運用フローを崩さず個人情報を安全に集中管理する方法
海外赴任者の健康管理では、国内勤務者とは異なる判定基準や健診コースを適用する必要があり、情報の閲覧権限も慎重に設定しなければなりません。特に複数の事業場を持つ企業や、部署ごとに管理担当者が異なる場合、個人情報の取り扱いに関するセキュリティや情報漏えい対策が大きな課題となります。
こうした課題に対しては健康管理システムの導入が有効であり、既存の運用フォーマットや判定基準をそのまま移行できる柔軟なシステム構造と、強固なアクセス制御を備えたシステムが求められます。機能ごとの操作権限をはじめ、所属や拠点ごとの閲覧範囲、面談記録や健診種別に応じたアクセス制御を細かく設定できれば、必要な情報だけを適切な担当者へ届ける運用が可能になります。
また、安全性の面では、国際規格であるISO 27001やクラウドセキュリティに関するISO 27017に準拠した管理体制や、不正アクセスを排除する通信暗号化などの対策が施されているシステムを選ぶことで、機微な健康情報を扱うリスクを低減できます。
健診代行サービス・健康管理システムで管理を効率化
健診代行サービスを活用すれば、企業が個別に行っている健診予約や受診案内、受診状況の確認などを効率化できます。
特に海外赴任者の場合、通常の定期健診とは受診時期や検査内容が異なるため、対象者ごとに個別対応が発生しがちです。こうした業務を外部サービスと連携することで、人事・労務担当者の作業負担を軽減できます。
例えば、医療機関との交渉や予約調整、請求業務まで一括して代行を依頼することで、全国に拠点がある場合でも事務作業の手間を大幅に削減できます。さらに健康管理システムを利用すれば、海外赴任者を含む従業員の健診結果や受診履歴を一元管理できます。
赴任前健診、帰国後健診、定期健康診断などの情報を従業員単位で確認できるようにすることで、Excelや紙を探して過去の受診状況を確認するといった手間も減らせます。
海外赴任者の健康診断は、「必要な項目を知る」だけでなく、対象者を漏れなく把握し、適切なタイミングで健診を手配し、その後の結果まで継続して管理することが重要です。
海外赴任者が多く、健診の予約や受診状況の確認、結果管理に負担を感じている場合は、健診業務そのものを見直すことも一つの方法です。
自社の運用に合った健診代行サービスや健康管理システムを活用し、担当者の負担を抑えながら、海外赴任者を含む従業員の健康管理を確実に行える体制を整えましょう。
エムスリーヘルスデザインの健診代行サービスの特徴
医療業界最大級の医師ネットワークを所有するエムスリー社の関連会社であるエムスリーヘルスデザインでは、健診代行サービスを取り扱っています。
エムスリーヘルスデザインの健診代行サービスはパッケージ型の商品と異なり、必要な部分だけ委託が可能です。
具体的には、次のような特徴があります。
- 既存フローに合わせた柔軟な予約設計:
事前の予約枠確保や、従業員から希望日を募る方式など、現在の運用状況に合わせて最適な予約フローを構築します。
- 定期健康診断以外の多様な健診にも対応:
定期健康診断だけでなく、雇用時健診や海外赴任前後の健診、その他各種健診コースなど、幅広いニーズにお応えします。
- 新規の医療機関開拓をサポート:
これまで利用実績のない医療機関での受診を希望される場合も、追加費用なしで新たな医療機関の開拓・調整に対応可能です。
- 巡回健診による従業員の負担軽減:
医療チームが直接職場を訪問する巡回健診により、従業員の移動時間を削減。勤務時間内でのスムーズな受診を実現します。
健診代行サービスの具体的なサポート内容や対応可能な健診コースについては、以下の資料で詳しくご紹介しています。
海外赴任者の健診にも対応|健康管理システム「ハピネスパートナーズ」で健診業務のさらなる一歩を
エムスリーヘルスデザインで提供している健康管理システム「ハピネスパートナーズ」は、海外赴任者の健診データ管理をはじめ、企業の健康経営の円滑な推進をサポートします。ここでは、ハピネスパートナーズの一部の機能をご紹介します。
1. 海外赴任者や複数拠点の健診データ・受診管理を一元化
海外赴任前後健診をはじめ、定期健診、特殊健診、雇用時健診といった多様な健診コースのデータや、面談記録、ストレスチェック、労働時間などの健康情報を統一フォーマットでクラウド上に集約・一元管理できます。
また、従業員専用マイページは多言語対応(英語・中国語など)を備えているため、国籍や勤務地を問わず、従業員自身がスムーズに健診結果の確認やアンケート回答、予約ができる環境を整えられます。
2. 「EBHS Life」による健康課題の可視化と健康経営の推進
ハピネスパートナーズには、科学的根拠に基づくAI分析プログラム「EBHS Life」が標準搭載されています。
- 個人向けレポート:
ヘルススコアや「予測寿命」を分かりやすく可視化し、従業員一人ひとりの健康意識の向上と行動変容を促します。
- 企業向けレポート:
社員全体の健康状態や疾病リスク、プレゼンティーイズムによる経済的損失額を算出・分析。エビデンスに基づく投資対効果の高い健康経営施策の立案・評価を可能にします。
3. 健診業務の工数を約87%削減見込み。人事・労務の生産性を向上へ
従来の紙やExcelによる煩雑な管理から移行することで、未受診者の抽出や自動リマインド配信、労働基準監督署への提出用報告書(e-Gov連携XML)の自動作成などがシステム上で完結します。これにより健診業務の最大約87%の工数削減(従業員2,000名規模で年間約1,447時間分の削減)が見込まれ、担当者は手作業の負担から解放されて組織づくりや健康経営の推進といったコア業務に集中できるようになります。
【無料】企業向け健康管理システム ハピネスパートナーズの資料をダウンロードする
ハピネスパートナーズは、継続率99%の実績を持ち、産業医の94%から推奨されているクラウド型健康管理システムです。初期設定から運用開始後まで専任チームによるサポート体制が整っており、自社に最適なプランや機能についての詳しい資料を無料で提供しています。海外赴任者の健診管理をはじめ、社内の産業保健業務全体の効率化や質の向上を目指す方は、まずはサービス資料で詳細を確認してみてはいかがでしょうか。
健康管理システムに関するお役立ち資料はこちら
おすすめ記事
健康診断

これひとつで、
健診結果を一元管理


※システム利用継続企業数 /
累計導入企業数(2025年11月時点)
健診予約
受診勧奨
面談・指導記録
業務歴管理
問診
報告書作成
特殊健診対応
データ分析
ストレスチェック

「ハピネスパートナーズ」の3つの強み

ペーパーレスで87%の
工数削減を実現

企業独自のシステムに
カスタマイズ

健康課題を見える化
分析がカンタンに
ハピネスパートナーズが
人事労務・産業医に選ばれる理由
わかりやすく、使いやすい操作画面
シンプルで簡単に操作できる画面設計
産業保健スタッフから『使いやすい』と高い評価をいただいています。

健診予約や未受診者へのリマインドも一括で
受診率100%が目指せます
未受診者を一括抽出し、受診を促したい従業員には
リマインド機能で手軽にフォローアップができます。

ご要望に合わせて自由にカスタマイズ
特殊健診結果管理にも対応
「現行フォーマットのまま移行したい」や「業務歴を管理したい」「閲覧権限を設定したい」など企業ごとのご要望に合わせてシステムを設計・開発します。

従業員の健康状態をスコア化・課題分析
従業員の離職や休職を予防します
独自アルゴリズムEBHS Lifeを標準搭載し、ヘルススコアや健康寿命がわかる個人向け健診結果分析レポートで健康リスクを見える化できます。

専門スタッフによる安心の導入サポート
最短3ヶ月で導入が可能
デモ画面を見ながらのトライアルのほか、人事データの取り込みも可能。紙からデータへの移行は専門スタッフが丁寧にサポートします。
お問い合わせ・各種資料請求はこちら
健康情報のデータ管理から健康経営コンサルティングまでワンストップで支援いたします







