健康診断の報告義務はどこまで?
毎年やってくる健康診断の時期。
「健康診断の結果は、どの健診について、どこまで国へ報告する義務があるのだろうか?」
「会社は、健康診断結果をどこまで管理する義務があるのだろうか?」
健康診断の取りまとめを担当する管理者や人事・労務担当者であれば、一度はこのような疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
従業員の健康管理は、企業にとって重要な責務の一つです。しかし、労働安全衛生法に基づく報告義務を正しく理解し、適切に運用できていなければ、法令違反や企業リスクにつながるおそれがあります。
また、健康診断業務を外部へ委託する場合には、個人情報やプライバシーへの配慮も欠かせません。そのため、「どこまで委託できるのか」「会社として何を管理すべきなのか」が分かりにくいと感じる担当者も少なくありません。
この記事では、健康診断結果に関する国への報告義務を中心に、企業が押さえておくべきポイントや管理上の注意点について、分かりやすく解説します。
関連サービス:健康管理システム「ハピネスパートナーズ」の詳細を見る
健康診断結果を国へ報告する必要がある事業場とは
すべての会社が、健康診断の結果を国へ報告しなければならないわけではありません。
一般的な定期健康診断について、所轄の労働基準監督署長への報告が必要となるのは、原則として常時50人以上の労働者を使用する事業場です。
ここで注意したいのが、人数は会社全体ではなく、支店や工場、営業所などの「事業場」単位で判断するという点です。
たとえば、会社全体では100人の従業員が在籍していても、各事業場の労働者数が50人未満であれば、一般の定期健康診断結果について報告義務が生じない場合があります。一方、一つの事業場で常時50人以上の労働者を使用している場合は、健康診断の実施後、遅滞なく報告しなければなりません。
なお、報告義務がない事業場であっても、健康診断そのものを実施しなくてよいという意味ではありません。
法令上の対象となる労働者に対する健康診断の実施義務は、事業場の規模にかかわらず発生します。「50人未満だから健康診断を実施しなくてもよい」と誤解しないよう注意が必要です。
国へ報告するのは、従業員一人ひとりの詳しい診断結果ではない
健康診断結果の報告と聞くと、従業員一人ひとりの血圧や血液検査の数値、既往歴などを国へ提出するイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、一般の定期健康診断結果報告では、通常、従業員ごとの詳細な検査数値を提出するのではなく、次のような情報を取りまとめて報告します。
- 健康診断を実施した年月日
- 対象となる労働者数
- 健康診断を受診した労働者数
- 項目ごとの有所見者数
- 医師の指示人数
- 産業医に関する情報
つまり、国への報告は、事業場全体の実施状況や有所見者の状況を集計して届け出るものです。
ただし、報告書に個人の詳細な検査数値を記載しないからといって、会社が個々の健康診断結果を管理しなくてよいわけではありません。会社には、従業員ごとの健康診断結果を適切に記録し、必要な事後措置につなげることが求められます。
「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする
※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します
特殊健康診断は、50人未満でも報告が必要になることがある
一般の定期健康診断では「常時50人以上」が報告義務の一つの基準となりますが、すべての健康診断に同じ基準が適用されるわけではありません。
有害な業務に従事する労働者を対象とした特殊健康診断には、事業場の人数にかかわらず、結果の報告が必要となるものがあります。
代表的なものとして、次のような健康診断が挙げられます。
- 有機溶剤健康診断
- 鉛健康診断
- 特定化学物質健康診断
- じん肺健康診断
特殊健康診断は、対象となる業務や物質によって、実施時期、報告方法、保存期間などが異なります。特定の有害業務を行っている事業場では、一般健康診断とは分けて管理しなければなりません。
「従業員が50人未満だから報告は不要」と一律に判断するのではなく、自社で取り扱っている化学物質や業務内容まで確認することが重要です。
会社に求められるのは、健康診断の実施と報告だけではない

会社の義務は、従業員に健康診断を受けてもらい、必要な報告書を提出すれば終わり、というものではありません。
健康診断の実施後には、主に次のような対応が必要です。
1.健康診断結果を記録する
会社は、法令に基づいて実施した健康診断について、従業員ごとの健康診断個人票を作成し、保存する必要があります。
一般の健康診断に関する記録の保存期間は、原則として5年間です。
特殊健康診断についても保存義務がありますが、種類によっては5年を超える期間の保存が必要です。たとえば、じん肺健康診断では7年間、特定の化学物質に関する健康診断では30年間の保存が必要となる場合があります。
紙の診断結果をファイルに保管しているだけでは、保存期限の把握や過去データの確認が難しくなります。健康診断の種類ごとに、保存期間を正確に管理できる仕組みが必要です。
2.従業員本人に結果を通知する
会社は、健康診断を受けた従業員に対して、その結果を通知しなければなりません。
健康診断を外部の医療機関で実施し、医療機関から本人へ直接結果が送られる場合でも、会社として必要な結果を適切に把握し、事後措置につなげられる体制を整えておく必要があります。
3.異常所見がある従業員について医師の意見を聴く
健康診断の結果、異常の所見があると診断された従業員については、会社は、就業上の措置が必要かどうかについて医師または歯科医師の意見を聴かなければなりません。
意見聴取は、原則として健康診断が行われた日から3か月以内に行います。
医師の意見としては、一般的に次のような区分があります。
- 通常勤務で問題がない
- 一定の配慮や制限を設ければ勤務できる
- 休業などが必要である
会社は、健康診断の数値だけを見て独自に就業制限を判断するのではなく、本人の業務内容や労働時間などの情報を医師に提供し、専門的な意見を得る必要があります。
4.必要な就業上の措置を講じる
医師の意見を踏まえ、会社は必要に応じて次のような措置を検討します。
- 就業場所の変更
- 作業内容の変更
- 労働時間の短縮
- 深夜業や時間外労働の制限
- 休業
- 医療機関への受診勧奨
健康診断の結果を保管しているだけでは、従業員の健康管理を行っているとはいえません。
有所見者を把握し、医師への意見聴取、本人への連絡、就業上の配慮まで確実につなげることが重要です。
「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする
※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します
健康診断業務を外部へ委託すれば、会社の責任もなくなる?
健康診断の予約、結果回収、データ入力、報告書の作成などを、外部の事業者へ委託することは可能です。
特に複数の拠点や医療機関を利用している会社では、外部委託によって担当者の負担を大きく軽減できる場合があります。
ただし、業務を外部へ委託しても、健康診断の実施や事後措置に関する会社の法的な責任まで委託先へ移るわけではありません。会社には、委託先が健康情報を適切に取り扱っているかを確認し、必要な監督を行うことが求められます。
健康診断結果は、従業員の身体状況や病歴などを含む、特に慎重な管理が必要な情報です。
「作業を任せたから、あとは委託先に任せきり」という運用ではなく、会社側でも取扱ルールを定め、適切な委託先を選定することが大切です。厚生労働省も、事業場における健康情報の取扱規程を策定し、利用目的や取扱者、権限などを明確にすることを示しています。
健康診断結果は、社内の誰でも見てよいわけではない
会社が健康診断結果を管理する必要があるからといって、経営者や管理職、人事担当者であれば自由に閲覧してよいわけではありません。
健康情報を取り扱う担当者や閲覧できる範囲は、業務上必要な範囲に限定する必要があります。
たとえば、所属長に就業上の配慮を依頼する場合でも、病名や詳細な検査数値まで伝える必要があるとは限りません。
「残業を月何時間以内にする」「重量物を扱う業務を避ける」など、業務上必要な配慮事項のみを共有する方法も考えられます。
情報を必要以上に共有すると、従業員のプライバシーを侵害するだけでなく、社内での不利益な取り扱いや情報漏えいにつながるおそれがあります。
誰が、何の目的で、どの情報を閲覧できるのかを明確にし、アクセス権限を適切に管理することが重要です。
健康診断管理で起こりやすい課題
健康診断の管理では、次のような課題が起こりがちです。
- 従業員ごとに受診する医療機関が異なり、結果の形式が統一されていない
- 紙、PDF、表計算ソフトなどに情報が分散している
- 未受診者や結果未提出者を把握できない
- 有所見者への受診勧奨が担当者任せになっている
- 医師の意見聴取が必要な対象者を見落としてしまう
- 拠点ごとの報告義務を正確に判断できない
- 健康診断の種類ごとの保存期限を管理できない
- 異動や退職の際に情報の引き継ぎができない
- 担当者以外の従業員が健康情報を閲覧できてしまう
従業員数や拠点数が増えるほど、表計算ソフトや紙を中心とした管理には限界が生じます。
管理表を作成していても、更新漏れや入力ミスがあれば、未受診者への案内、事後措置、行政への報告などに影響します。
また、担当者の異動や退職によって管理方法が分からなくなるなど、業務が属人化しやすいことも大きなリスクです。
「健康診断事後措置で抑えるポイント」資料をダウンロードする
※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します
健康診断管理を効率化するポイント
健康診断業務を効率化するためには、単に結果をデータ化するだけでは不十分です。
受診前の準備から、受診状況の確認、結果回収、事後措置、報告、保存までを、一連の業務として管理できる体制が求められます。
情報を一元管理する
紙、メール、共有フォルダ、表計算ソフトなどに分散している情報を一つにまとめることで、担当者が必要な情報を探す時間を削減できます。
従業員ごとの受診履歴や過去の結果を確認できれば、経年変化も把握しやすくなります。
未受診者や未対応者を見える化する
受診予定者、受診済み、結果待ち、要再検査、医師の意見聴取待ちなど、対応状況を一覧で確認できるようにします。
「誰に、何の対応が必要なのか」が明確になれば、連絡漏れや事後措置の遅れを防ぎやすくなります。
拠点・健診種別ごとに集計する
行政への報告義務は、事業場の規模や健康診断の種類によって異なります。
事業場別、年度別、健診種別に受診者数や有所見者数を集計できる仕組みがあれば、報告書の作成にかかる負担を軽減できます。
閲覧権限を適切に設定する
健康情報の管理では、利便性だけでなく、安全性も重要です。
人事担当者、産業医、保健師、所属長など、役割に応じて閲覧できる情報を分けることで、必要以上の情報共有を防ぐことができます。
対応履歴を残す
受診勧奨を行った日、本人からの回答、医師の意見、就業上の措置などを記録しておけば、対応状況を確認しやすくなります。
担当者が交代した場合でも、過去の経緯を追えるため、継続的な健康管理につながります。
健康診断の管理を、担当者だけの負担にしないために
健康診断業務では、受診対象者の抽出、医療機関との調整、受診案内、結果の回収、データ入力、有所見者への対応、産業医との連携、行政への報告など、多くの作業が発生します。
しかも、健康情報を扱うため、速さだけでなく正確性や安全性も求められます。
担当者が表計算ソフトや紙を使いながら、一つひとつ手作業で対応していると、業務負担が増えるだけでなく、確認漏れや対応の遅れが生じる可能性があります。
こうした課題を解決するためには、健康診断に関する情報と業務を一元化し、会社全体で適切に管理できる仕組みを整えることが重要です。
「健診業務の負担を減らすには?DXツールの成功事例」資料をダウンロードする
※エムスリーグループのサイト(go100.jp)へ遷移します
労基署への提出業務も効率化。健康管理システム「ハピネスパートナーズ」
健康診断後は、結果の管理だけでなく、就業判定や面談管理、労働基準監督署への報告書作成など、多くの法令対応が必要です。紙やExcelで管理していると、集計や確認に時間がかかり、対応漏れのリスクも高まります。
エムスリーヘルスデザインの健康管理システム「ハピネスパートナーズ」は、健診結果や労務情報を一元管理し、健康管理業務の効率化を支援するクラウドサービスです。事務作業を最大87%削減できる見込みがあり、人事・総務担当者の負担軽減につながります。
健康管理システム「ハピネスパートナーズ」資料をダウンロードする
法令対応をスムーズに
ハピネスパートナーズでは、健診結果や特殊健診、雇用時健診、業務歴などを一元管理できます。
さらに、労働基準監督署へ提出する報告書をワンクリックで作成できるため、集計や転記の手間を削減し、提出業務を効率化します。
健康情報を安全に管理
健康情報は機微な個人情報であるため、高いセキュリティが欠かせません。
ハピネスパートナーズは、情報セキュリティの国際規格ISO27001と、クラウドサービスのセキュリティ規格ISO27017を取得。利用者ごとに閲覧・操作権限を設定できるため、産業医・保健師・人事担当者など必要な関係者だけが情報を共有できます。
健診後の対応まで一元管理
産業医は面談前に健診結果を確認できるため、事前準備がスムーズです。面談記録や就業判定もシステムで管理でき、対応状況の把握や情報共有も効率化できます。
また、健診データを分析し、従業員全体の健康課題を可視化。健康経営の推進にも活用できます。
ストレスチェックにも対応
「職場のストレスチェック+plus」と連携することで、ストレスチェックの実施から集団分析、労基署への報告まで一元管理が可能です。さらに、EAPサービスを併用すれば、従業員やその家族は専門家へ相談できます。
健康管理システム「ハピネスパートナーズ」資料をダウンロードする
健診代行もエムスリーヘルスデザイン
エムスリーヘルスデザインでは、健康管理システムだけでなく、健康診断の代行サービスも提供しています。予約調整や医療機関とのやり取り、従業員対応、請求管理まで幅広い業務をサポートし、人事・総務担当者の負担を軽減します。
エムスリーヘルスデザインは、産業保健分野で40年以上にわたり企業を支援してきた実績があります。
その経験を活かし、企業ごとの課題に合わせた効率的な健診運用をサポートします。
- 健診予約の調整
- 医療機関との連絡・確認
- 従業員からの問い合わせ対応
- 日程変更やキャンセルの調整
- 請求関連業務の整理
- 健診運用フローの設計
これらの業務を外部に委託することで、人事・総務担当者の作業負担を軽減し、より重要度の高い業務へ時間を使いませんか。
エムスリーヘルスデザインの「健診代行サービス」資料をダウンロードする
エムスリーヘルスデザインの健診代行サービスの特徴
- 貴社の運用に合わせて柔軟に設計:
企業ごとの勤務形態、拠点数、従業員数、既存の業務フローに合わせて、無理のない運用方法を設計できます。 - 新しい医療機関との契約にも対応:
これまで利用していない医療機関で健診を実施したい場合も相談可能です。追加費用なしで新たな医療機関の開拓にも対応できます。 - 受診票・問診票・検尿キットの送付先も選択可能:
受診票、問診票、検尿キットなどの送付先は、事務所に一括や従業員の自宅宛てに個別送付など、企業の運用に合わせて柔軟に設定できます。 - 既存フローに合わせた予約方法を設計可能:
予約方法も、現在の運用に合わせて調整できます。たとえば、企業側であらかじめ予約枠を確保する方法や、従業員から希望日を集めて調整する方法など、状況に応じた進め方が可能です。 - 定期健康診断以外の健診にも対応:
雇用時健診、海外赴任前後の健診、その他各種健診コースなど、複数の健診種別をまとめて管理したい企業にも適しています。 - 巡回健診で従業員の移動負担を軽減:
巡回健診は、勤務時間内の限られた時間でも受診しやすく、従業員・企業双方にとって負担を抑えやすい方法です。
健診業務の効率化から健康管理までワンストップで支援できることが、エムスリーヘルスデザインの強みです。
健康経営のためのさらなる一歩を、エムスリーヘルスデザインとともに踏み出しませんか。
健康管理システムに関するお役立ち資料はこちら
おすすめ記事
健康診断

これひとつで、
健診結果を一元管理


※システム利用継続企業数 /
累計導入企業数(2025年11月時点)
健診予約
受診勧奨
面談・指導記録
業務歴管理
問診
報告書作成
特殊健診対応
データ分析
ストレスチェック

「ハピネスパートナーズ」の3つの強み

ペーパーレスで87%の
工数削減を実現

企業独自のシステムに
カスタマイズ

健康課題を見える化
分析がカンタンに
ハピネスパートナーズが
人事労務・産業医に選ばれる理由
わかりやすく、使いやすい操作画面
シンプルで簡単に操作できる画面設計
産業保健スタッフから『使いやすい』と高い評価をいただいています。

健診予約や未受診者へのリマインドも一括で
受診率100%が目指せます
未受診者を一括抽出し、受診を促したい従業員には
リマインド機能で手軽にフォローアップができます。

ご要望に合わせて自由にカスタマイズ
特殊健診結果管理にも対応
「現行フォーマットのまま移行したい」や「業務歴を管理したい」「閲覧権限を設定したい」など企業ごとのご要望に合わせてシステムを設計・開発します。

従業員の健康状態をスコア化・課題分析
従業員の離職や休職を予防します
独自アルゴリズムEBHS Lifeを標準搭載し、ヘルススコアや健康寿命がわかる個人向け健診結果分析レポートで健康リスクを見える化できます。

専門スタッフによる安心の導入サポート
最短3ヶ月で導入が可能
デモ画面を見ながらのトライアルのほか、人事データの取り込みも可能。紙からデータへの移行は専門スタッフが丁寧にサポートします。
お問い合わせ・各種資料請求はこちら
健康情報のデータ管理から健康経営コンサルティングまでワンストップで支援いたします







