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健康診断

公開日:

2026/08/12

更新日:

2026/08/12

健康診断の受診時間は残業代の対象?業務終了後の法律的義務と賃金支払いを徹底解説

吉田瞳(保健師、看護師、第一種衛生管理者)

健康診断の受診時間は残業代の対象?業務終了後の法律的義務と賃金支払いを徹底解説

健康診断の受診は労働者の健康管理だけでなく、企業の生産性ならびに健康経営という観点からも重要な事項です。一方で、健康診断にまつわる人事・労務管理の実務において、「業務終了後や休日に健康診断を受けた労働者から残業代(割増賃金)の請求があったが支払う義務はあるのか」「健康診断の受診に要した時間は労働時間としてカウントすべきか」といった疑問が発生することは少なくありません。

健康診断受診中の賃金支払いや割増賃金(残業代)が発生するか否かは、実施する健康診断の種類(一般健康診断か特殊健康診断か)によって法律上の取り扱いが異なります。

本記事では、労働基準法や労働安全衛生法に基づく労働時間の定義や割増賃金の支払い義務をはじめ、業務終了後に受診する場合の実務的な留意点、トラブルを防止するための社内規程の整備方法について解説します。

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健康診断における法律的義務と労働基準法・労働安全衛生法上の位置づけ

企業が労働者に対して健康診断を実施することは、労働安全衛生法(安衛法)で定められた法的義務です。

事業者の実施義務と労働者の受診義務

労働安全衛生法第66条第1項に基づき、事業者は労働者に対して医師による健康診断を実施する義務を負います。同時に、労働者にも事業者が実施する健康診断を受診する義務(受診義務)が課されています。 

一般的に企業が毎年実施する「定期健康診断」や「雇入れ時の健康診断」などは、労働者の健康を保持・増進することを目的とした制度です。

自己判断で会社の指定する健診を拒否する労働者に対しては、会社側が受診を促す必要がありますが、労働者には他の医師等による健康診断を受け、その証明書面を提出することで代替する権利も安衛法で認められています。仮に正当な理由なく代替健診や書面提出も拒む場合は、就業規則に基づき丁寧な受診勧奨を行うとともに、規定に沿った個別対応を検討する必要があります。

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参考:e-GOV法令「労働安全衛生法」https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057

健康診断は労働時間にあたる?残業代の支払いに関する規定

健康診断は労働時間にあたる?残業代の支払いに関する規定.png

最もトラブルが発生しやすいのが、「受診時間中の賃金」や「業務時間外(定時後や休日)に受けた場合の割増賃金(残業代)」の支払いです。企業が実施する健康診断は、大きく一般健康診断と特殊健康診断の2つに分類され、どちらに該当するかによって労働時間および賃金支払いの扱いが根本的に異なります。

一般健康診断|受診時間の給与支払い・割増賃金は原則「法的な義務なし」

定期健康診断などの一般健康診断は、直接的な業務の遂行に関連して行われるものではありません。そのため厚生労働省や行政通達において、受診に要した時間についての賃金は、事業者が当然に負担すべきものではなく、労使間で協議して定めるべきものとされています。

すなわち、法律上は一般健康診断の受診時間は労働時間には含まれず、賃金や残業代(割増賃金)を支払う法的な義務はありません。

ただし、厚生労働省のFAQや行政指導等でも「円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」と記載されています。実際の現場では、無給扱いとすることで受けるのをためらう労働者が出たり受診率が低下したりすることを防ぐため、所定労働時間内に受診させ、通常通りの賃金を支払う運用を採用する会社が多くみられます。

特殊健康診断|当然に労働時間扱い

一方、有機溶剤、特定化学物質、鉛、放射線など有害な業務に従事する労働者を対象とする特殊健康診断は取り扱いが全く異なります。

特殊健康診断は、業務の遂行に起因して労働者の健康障害が生じることを防ぐために行われるものであり、業務遂行と直接関わっています。そのため、受診に要する時間は当然に「労働時間」として扱われると明記されています。

  • 所定労働時間内に実施した場合:通常の賃金を支払う必要があります。
  • 所定労働時間外や業務終了後に実施した場合:法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える部分については、法定の割増賃金(残業代)を支払う義務が発生します。

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業務終了後(所定労働時間後)や休日に健康診断を行う場合の実務的注意点

日中の通常業務が繁忙であるため、「業務終了後(定時後)に受けてほしい」「休日に指定病院で受けるように」と指示するケースや、労働者が自主的に定時後に受診するケースもあり得ます。その際会社はどのように対応するのが好ましいのか、本章で詳しく解説します。

  • 一般健康診断の場合:法律上、受診時間を当然に労働時間として扱う義務はありません。ただし、会社の指示(指揮命令)によって業務時間外に受診させる場合は労働時間とみなされ割増賃金が発生する可能性があるため、受診の任意性や就業規則・労使協定の規定を事前に整理しておくことが重要です。
  • 特殊健康診断の場合:業務終了後や休日の受診時間は時間外労働・休日労働となりますので、必ず所定の割増率をかけた賃金(残業代)を支払わなければなりません。

健診受診に伴う移動時間や待ち時間の取り扱い

健診施設までの移動時間や、受付での待ち時間をどう扱うかも実務上の悩みどころです。

特殊健康診断の受診に要した時間そのものは、労働時間と解されています。一方で、受診に伴う健診施設への移動時間や待ち時間などの具体的な取り扱いについては、それぞれの事業場の就業規則や労使協定において、指揮命令下の度合い等に基づき事前にルールを明確にしておくことが、トラブル防止の観点から望ましいでしょう。ただし多くの場合、特殊健康診断においては、移動時間は指揮命令下にあるか解釈が分かれますが、待ち時間は事業者の指揮命令下にあると解釈されるケースが多く、原則として労働時間に含めます。

一般健康診断の場合は法的な指定はありませんが、直帰や遅刻・早退の扱いを巡って労働者の不満につながる可能性もあるため、実務的には「移動時間を含めて所定労働時間内扱いとする」「会社指定の巡回健診車で受診させる」といった工夫を行う企業も見られます。健康診断の移動時間や待ち時間の扱いについても就業規則にあらかじめ定めておくことで労働者との認識の齟齬を予防することができます。

健康診断の実施・管理における企業の実務課題と対応策

健康診断は単に「受ける」だけでなく、受診率の維持や受診後の事後措置まで含めた適切な運用管理が企業に求められます。

受診率100%達成に向けたスケジュール調整と就業規則の整備

全社的な受診率100%を維持し、労使トラブルを防ぐためには、以下の実務的な体制整備が有効です。

  1. 就業規則の明文化:健診受診時間中の賃金の取り扱い(有給・無給・労働時間換算の有無等)や受診義務について就業規則に明確に規定し、労働者へ周知する。
  2. 業務量の配慮:業務終了後の受診による過重負担を防ぐため、受診当日の業務シフトを調整する、または所定労働時間内の一時離脱(中抜け)を許可する。
  3. 二次健診(再検査)の取り扱い整理:異常所見者へのスムーズな二次健診への予約案内や受診勧奨が求められます。業務負担軽減のため、案内配信や結果回収を一元管理できるシステムの導入を検討する企業が増えています。

 

二次健診の受診勧奨や、バラバラな健診日程のスケジュール調整・催促作業に追われている場合は、後述する健診代行サービスを活用し、予約手配から結果回収までを一括で外部委託するのも有効な手段です。

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健診結果の保存義務・ペーパーレス化と産業医連携

健康診断の実施後、事業者には以下の法的義務が課されています。

  • 健診結果の通知と保存:受診した労働者本人へ結果を通知し、健診結果個人票を作成して5年間(特殊健診の一部は30年間等)保存する。
  • 医師からの意見聴取:健康診断結果に異常の所見があった労働者について、産業医等から就業上の措置に関する意見を適切に聴取し、必要な事後措置を検討・実施する義務が事業者に課されています。
  • 労働基準監督署への報告:該当する事業場において、所轄の労働基準監督署へ「定期健康診断結果報告書」を提出する必要があります。

 

受診票の紙運用や手作業によるExcel入力・管理、転記作業は、記入漏れやデータの散逸、報告遅延のリスクを高めます。健診データのデジタル化(ペーパーレス化)と産業医とのスムーズな連携体制を構築することが、業務効率化の鍵となります。

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まとめ|正しい法令理解と効率的な運用で健やかな職場づくりを

「健康診断と残業代」を巡る法的な判断は、対象が一般健康診断か特殊健康診断かという区分、および会社が定める就業規則の規定内容によって決定されます。正しい法令知識に基づき、労働者が安心して健康診断を受けることができる社内規定と運用ルールを整備することが重要です。

健診の予約手配やデータ管理、産業医との連携業務などで実務負担を感じられている企業様は、ぜひ「健診代行サービス」や「ハピネスパートナーズ」といった専門ソリューションの利用をご検討ください。

社内の就業規則や運用の見直しを定期的に行い、法令遵守と労働者の健康管理を両立させた適正な職場環境を築いていきましょう。

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